ウェルビーイングはまず「職場の衣食住」から!?

「働くうえで大切なのは何か?」

この質問をしたら、給料やワークライフバランス、人間関係など、人によっていろいろな答えが返ってくるだろう。

わたしの答えはといえば、「衣食住」だ。

「え? 働くうえで大切なのが衣食住?」と思われるかもしれないが、本気でそう思っている。

というわけで今回は、「衣食住という3つの要素がいかに働きやすさに直結するか」について書いていきたい。

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医師・労働衛生コンサルタント 益江 毅 先生
(株式会社健康管理室 代表取締役・統括産業医)

〔講師経歴〕
産業医科大学卒業後、大阪警察病院や大阪船員保険病院ほかで内科医、循環器科医として勤務後、大手電機メーカー産業保健センター所長・専属産業医に就任。
2012年、産業医・保健師業務を中心とした産業保健サービスを提供する「株式会社健康管理室」を大阪市にて設立、これまでに上場企業や外資系企業、健康保険組合の統括産業医をはじめ、200社以上で産業医として従事。
主な著書に『産業医ハンドブック』(南江堂)、『メンタルヘルスケア実践ガイド』(産業医学振興財団)『やせたい人はカロリー制限をやめなさい』(ダイヤモンド社)など
株式会社健康管理室ホームページ

体格や体質に合った服装の選択肢が必要

まずは衣食住の、「衣」。

夫は先日転職し、地元の小さな企業から大きな銀行で働くことになった。

初日は「銀行だから」と言って、かっちりスーツを着て出勤。
しかし普段着慣れないスーツで長時間働くのはかなりストレスで、かかとは靴擦れで血まみれという悲惨な有様。

数日後先輩に相談してみたところ、「もっとカジュアルでも大丈夫だよ!」と言ってもらったそうだ。

先輩からのお墨付きをもらい、ノーネクタイで通勤時はジャケット無し。靴は完全な革靴ではなく、革靴とスニーカーの中間のようなオフィスカジュアルのものに変更。

夫は「めっちゃラクになった!」と喜んでいた。

もし先輩に「いつか慣れるよ」と言われ、窮屈なネクタイと血だらけになる革靴で毎日働かなくてはいけなかったとしたら、夫は新しい職場をポジティブに評価しなかったに違いない。

体格や体質は人によって異なるから、快適に感じる服装はそれぞれ違う。自分で着るものを最適化する選択肢があるかどうかは、とても大切だ。

安くて栄養バランスがいい社食で節約&昼休憩を満喫

次に、衣食住の「食」の部分。これもまた、夫の新しい職場はとても充実しているようだ。

オフィスの1階はカフェと社食になっていて、毎日スープ、サラダ付きの定食を格安で食べられる。

気をつけてはいてもどうしても野菜不足になりがちだから、安く体にいいものを食べられると夫は大喜び。なんならわたしも利用したいくらいだ(頼んでみたがさすがにダメだった)。

以前の職場には社食がなかったので、毎日街のレストランに行って昼食をとっていた。当然出費がかさむし、レストランに行って注文して食べ終わって会計して……と時間もかかる。

社食で食事をするようになってから月2万円以上の食費が浮き、気付いたらかなりの節約に。

1階に行けばすぐに食事できるので時間的余裕もあり、食事後はコーヒーを飲んでのんびりと過ごしたり、早く仕事に戻ってそのぶん早く家に帰るなど、昼休みを有意義に使えるようになったとのこと。

いままで「仕事中もお腹がすくから」と食事はしかたのない作業くらいに思っていたが、昼休みの質って大事なんだなぁ……としみじみ思った。

クーラーがないオフィスでは夏まともに働けない

さてさて、お次は衣食住の「住」。「住」はこの3つのなかで、一番大切といってもいいかもしれない。

新しい職場の6階のオフィスには大きな窓があってつねに明るく、市民公園が見えるので開放感たっぷり。オフィス内の机は広く資料も整理されていて、「さすが大手銀行」というきちんとした雰囲気。出勤すると、ピシっと背筋が伸びてやる気が出るそうだ。

ちなみに前のオフィスは古い建物でクーラーがなく、夏はまともに働けない状況だった(ドイツにはクーラーがない建物は多い)。

夫は9月1日から働き始めたので、「クーラーがあるなんてありがたい、クーラーのために土日も出勤したい」と言うくらいでありがたがっていた。

そりゃまぁ、クーラーがなくて乱雑なオフィスよりは、クーラーが利いていて整然としたオフィスのほうがいいよなぁ。

オフィス環境は自分で選べないのであまり注目されることはないが、1日8時間もいるのだから、その快適さは仕事しやすさに直結するのだ。

制服がストレスで辞めた結婚式場バイト

夫とそんな話をするなかで、「働きづらいな」と感じたり、すぐに「辞めたいな」と思った職場は、軒並み衣食住のクオリティが低かったことに気がついた。
せっかくなので、夫の「いい衣食住」体験に対し、わたしの残念な体験談を紹介したい。

まずは「衣」。
「衣」のストレスがとんでもなかったのは、結婚式場のアルバイトだ。

支給されたヒールの靴を履いて一日8時間以上立ち続けるのは本当に苦痛で、バイト後家にたどり着いた瞬間玄関で倒れ込むほど、毎日ふくらはぎがパンパンになっていた。

制服の白いジャケットはとにかく身動きがしづらく、クローク担当でお客様の荷物をいくつも抱えて動き回るとき、毎回「腕が上がらねぇ!!」とイライラした。

そのうえタイトスカートだから、お客様と話すためにかがむたびに、下着が見えるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。ズボンじゃダメなんですか?

とはいえ、ヒールの靴もジャケットもスカートもすべて制服だから、ほかに選択肢がない。嫌なら辞めるしかないのだ。

制服のせいで辞めるなんて馬鹿らしいとは思いつつも、あまりにも足が痛いので、(ほかにも理由はあったが)辞めることにした。

ノルマ達成のために昼食を取らずに売り場に立つ販売員

そして、「食」。

わたしが以前働いていたショップでは、昼休憩を丸々45分取る社員はほとんどいなかった。みんな、ノルマ達成に必死だったからだ。

休憩で席を外してしまえば、それだけ接客する時間が短くなる。だから社員たちは昼休憩をほとんど取らず、急いで適当になにか食べ、すぐに売り場に戻っていた。

わたしはそんななかでも堂々と休憩を取っていたが、そういう姿を見て、「昼飯を抜いて達成するノルマに価値があるんだろうか……」とずっとモヤモヤしていた。

オフィスワーカーでも、「昼ご飯を食べる時間がない」「午後眠くなるから食べない」という人は少なくない。でもそんな状況で、午後、いいパフォーマンスができるのだろうか。

食事の時間を減らせば、手っ取り早く労働時間を増やせる。

だからこそ、そうはせずにちゃんとみんなが食事を取れる環境を整えるかどうかで、企業が従業員を大切に思っているか否かがわかるのだ。

なにより、昼休憩すら満足に取れない職場で、有給休暇や育児休暇をしっかり取れるわけがない。たかが昼飯、されど昼飯だ。

夏はサウナ、冬は極寒の倉庫をオフィスにする悪行

最後に「住」。

これまた実話なのだが、倉庫として使うべきスペースをこっそりオフィスにしている店があった。もちろん違法である。

倉庫なので空調はなく、夏はサウナで冬は極寒。真夏は売り場へのドアを少しあけて涼しい空気を入れてはいたが全員つねに汗だくで、冬はアラスカで犬ぞりでも引くのか?というくらいの厚着をして仕事をしていた。

もともと倉庫使いが前提なので窓はひとつもないし、監査のときに倉庫だと言い張るため、いたるところに物が置いてあって動線は最悪。

極端な悪い例ではあるが、本当の話だ。

効率の良い働き方や優れた仕事術なんかの話はよく出るのに、快適なオフィス環境に無頓着な企業は、案外たくさんある。

労働環境にも適切な「衣食住」が大切

生活に衣食住が必要だといわれるのは、その3つの要素が生活の基礎であり、どれも欠けてはいけないものだからだ。充実した生活にはなくてはならないのである。

多くのオフィスワーカーは、1日の半分……とまではいかないにせよ、かなりの時間をオフィスで過ごす。それならば、職場にも適切な「衣食住」が必要だ。

いくら定時上がりで給料が良くても、靴擦れして足が痛み、昼食は毎日立ち食い蕎麦かコンビニのおにぎり、オフィスは窓がなくつねに暗い……。

そんな状況で、長く働き続けることができるんだろうか? いい仕事ができるんだろうか?

とはいえ衣食住は、従業員個人でどうにかできないことが多い。

だから、企業側が「いい衣食住」の環境を作らないといけないのだ。

いま注目される社員たちのウェルビーイング。

「衣食住」という視点から見直してみれば、新たな改善案が生まれ、より働きやすい環境になるんじゃないだろうか。

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株式会社メディカルトラストは、1,000事業所以上の産業医選任・50名以下の小規模事業場の支援を含めると2,000以上の事業場に選ばれ、業歴20年以上の経験と実績で、幅広く産業保健のサポートをしています。

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雨宮 紫苑

執筆者雨宮 紫苑
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ドイツ在住フリーライター。Yahoo!ニュースや東洋経済オンライン、現代ビジネス、ハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。

20以上の業歴による経験を活かし現場に寄り添い、

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