コラム
メンタルヘルス

逆パワハラとは?意外に多いモンスター部下によるメンタル不調を防ぐためにできること

「管理職になると、人間関係が大変……」と、少し疲れている方もいるのではないでしょうか。部下に対しては「パワハラと思われないように」と気を遣いながら接する。その一方で、自分は経営陣からパワハラグレーゾーンのプレッシャーをかけられる。
さらにもうひとつ、あります。部下から受ける「逆パワハラ」です。今回は、意外に多いモンスター部下から身を守る方法を考えていきたいと思います。

部下から上司へ行われる「逆パワハラ」

「逆パワハラ」という言葉を初めて聞いた方もいるかもしれません。まずは、その背景から見ていきましょう。

パワハラは「上司→部下以外にもある」と周知する必要性

公的な文書を紐解いてみると、2012年の厚生労働省の議事要旨に「逆パワハラ」の言葉が登場します。「パワーハラスメント」の用語に対する問題提起です。以下に引用します。

パワーハラスメントという言葉はこれまで、上司から部下へというイメージで報道や調査がされているので、この語感の強さはなかなか簡単にはぬぐえない印象がある。
報告書(案)では、上司から部下に行われる以外のものもあると書いているが、上司から部下へのことしか頭の中に残らないぐらい語感が強い点は留意しなくてはいけない。
上司から部下への問題だけではなくて、広くいじめ・嫌がらせを救おうとするのだったら、パワーハラスメントという言葉を再考慮するか、「逆パワハラ」という言葉を流行させるぐらいの覚悟で、上司から部下以外のものもありうるということを強く周知しなければいけない。
(太字は筆者による)

厚生労働省「第6回職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ議事要旨」

「パワハラは、上司から部下とは限らないことを周知すべき」という強い意志がうかがえます。それから年月を経て、現在では厚生労働省のパワーハラスメントの定義として「部下による行為」が明記されています。

  • 職務上の地位が上位の者による行為
  • 同僚又は部下による行為で、当該行為を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
  • 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
    (太字は筆者による)

逆パワハラへの注目度は上昇

逆パワハラへの注目度はどうなっているのか、2012年〜2021年の10年間でGoogle検索数の推移を調べてみました。

逆パワハラの検索数推移
Googleトレンドを元に筆者作成

大きな傾向として、右肩上がりに増えていることがわかります。とくに2019年10月の急増が気になるところです。調べてみると、「「逆パワハラ」産業医大教授が提訴 「中傷で不当処分」主張(西日本新聞 2019/10/28)」という報道が出た時期と合致していました。“准教授ら後輩からの逆パワハラを、教授が訴えた”という内容で、このあたりから逆パワハラの存在が社会的にも浸透していったと考えられます。具体的には、どんな行為が逆パワハラとなるのでしょうか。まず、パワハラ全体についておさらいしておきます。

パワーハラスメントに該当すると考えられる例

パワーハラスメントに該当すると考えられる例
厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」P4

上記のうち、「2. 精神的な攻撃」や「3. 人間関係からの切り離し」は、逆パワハラでも多く見られる例です。たとえば、以下が考えられます。

  • 部下が上司を集団で無視し、職場で孤立させる
  • 部下が上司の能力を否定し、罵倒するメールを複数の関係者に送る
  • 部下が上司の人格を否定するような言動、侮辱的な言動をする

近年では、過剰に攻撃的な態度をとったり、指示に従わなかったりする「モンスター部下」に悩まされる上司も増えています。いつも部下や周囲を優先し、自分のことは後回しにしがちな方は、自分のこころまで犠牲にしていませんか。上司という立場だからこそ、必要な自衛もあります。

モンスター部下から身を守るためにすべき5つのこと

モンスター部下から自分の身を守るために、何をすべきでしょうか。ここでは5つのご提案をしたいと思います。

  1. 社内に「逆パワハラ」の概念を周知する
  2. 自分も守られるべき立場であることを認識する
  3. 事業主(経営者)に相談する
  4. 産業医と面談する
  5. 事態が深刻な場合は証拠を記録しておく

1:社内に「逆パワハラ」の概念を周知する

1つめは「社内に逆パワハラの概念を周知する」ことです。先に引用した文章のなかに、「逆パワハラ」という言葉を流行させるぐらいの覚悟で、上司から部下以外のものもありうるということを強く周知しなければいけない。という文言がありました。

「周知することが抑止力になる」ことを、すでに私たちは経験しています。“上司から部下”へのパワーハラスメントは、広く周知されることで意識改革が起こり、監視の目が育ち、被害者は声をあげやすくなりました。会社全体(難しければチーム内だけでも)で、ハラスメントを議題とできる機会をうかがい、最終的には逆パワハラの例示も含めたパンフレットの配布などにつなげていきましょう。

2:自分も守られるべき立場であることを認識する

2つめは「自分も守られるべき立場であることを認識する」ことです。

2019年に改正された労働施策総合推進法において、パワーハラスメントの防止措置を講じることが、事業主に義務付けられました。

(雇用管理上の措置等)
第30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

労働施策総合推進法(抄)

事業主には、自分が雇用するすべての労働者および派遣労働者に対して、ハラスメントを受けないようにする義務があります。管理職だから、上司だからと、ハラスメントを受けて耐える理由は、どこにもありません。この点の意識改革を、自分自身の中でしっかり行っておきます。

3:会社の相談窓口に相談する

3つめは「会社の相談窓口に相談する」ことです。事業主がかならず講じなければならない措置として、以下が定められています。

  • 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
  • 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
  • 併せて講ずべき措置 (プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)

相談窓口をあらかじめ定めることや、相談に対して迅速かつ適切な対応を行うことは、事業主の義務となります。
相談の対応範囲についても、「ハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、ハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること。」…とされています。「逆パワハラを受けているかもしれない」と感じたら、堂々と会社へ相談しましょう。

4:産業医と面談する

4つめは「産業医と面談する」ことです。会社に産業医がいれば、面談の機会をうまく活用します。

そもそも産業医とは何かといえば、「事業場において労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師」です。逆パワハラで精神が疲弊し切ってしまう前に、積極的に相談しましょう。社内での立場が上になるにつれ、頼られることはあっても頼れる相手が少なくなっていきますから、産業医のような存在は貴重です。

5:事態が深刻な場合は証拠を記録しておく

5つめは「事態が深刻な場合は証拠を記録しておく」ことです。

万が一、労災認定を求めることになったときや裁判になったときに役立つ可能性があります。逆パワハラが発生した日付、時刻、場所、誰から受けたのか、内容、自分が感じたことなどを、文書として残します。SNSの投稿やメール・LINEなどはスクリーンキャプチャを保存すること、目撃者など客観的に証言できる人がいればその人についても、メモしておきましょう。

さいごに

本記事では「逆パワハラ」をテーマにお届けしました。逆パワハラは、耐えすぎてメンタルヘルス不調を起こしてしまうケースがあります。とくに初めて部下を持ったばかりのときは、「自分が上司として未熟だから」と自分のせいにして背負ってしまいがちです。

しかし、上司も部下も、会社という場で演じている仕事上の役割にすぎません。「人間同士」として見たときにおかしいことは、やはりおかしいのです。あらためて、「どうか、自分のこころを犠牲にしないでください」とお伝えしたいと思います。

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〈三島 つむぎ〉
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。

   
       

         
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