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衛生委員会では、労働災害の予防や衛生向上のための対策を話し合い、具体的な課題に対処する計画を立てます。この話し合いに欠かせないのが、取り扱うテーマです。衛生委員会の目的を果たすためには曖昧なものではなく、明確なテーマを選定しましょう。
しかし、中には衛生委員会で話し合うべきテーマが思い浮かばずに悩んでいる人もいるかもしれません。本記事では、衛生委員会で話し合う内容を探している人に向けて、衛生委員会のテーマの決め方などを詳しく解説します。
衛生委員会は、労働安全衛生法に基づき、一定の規模に該当する事業場では設置が義務付けられています。(※)衛生委員会の目的は、労働災害の防止や職場環境の改善を通した労働者の健康の維持・増進です。
衛生委員会は、労働者の健康障害の防止や健康の保持増進に関する取り組みなどを調査審議する場です。そのため、事業者側と労働者側の双方からメンバーが選出され、議論が行われます。
※参考:職場のあんぜんサイト(厚生労働省). 「衛生委員会」.
衛生委員会は、次の4つの構成員で構成されます。
※引用:厚生労働省. 「安全委員会、衛生委員会について教えてください。」.
議長以外の委員は事業者が指名しますが、議長以外の委員の半数については、労働組合(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合)または、労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名する必要があります。
なお、衛生委員会の構成員の人数については労働安全衛生法上、特に定められていません。事業場の規模や業種、労働者の状況などに合わせて、適切な人数を決めることが重要です。
衛生委員会で取り扱うテーマは、労働者の健康障害の防止や健康の保持増進に関する重要事項です。具体的には、以下の事項が挙げられます。(※)
このうち、衛生委員会で頻繁に議論されるテーマは以下の通りです。
労働災害の原因や再発防止に関する対策では、労働災害の発生原因の分析や、再発防止のための対策が、衛生に関する規定作成では、騒音や振動、有害物質などの有害要因の対策や、快適な職場環境づくりのための取り組みが議論されます。
また、定期健康診断等の結果に対する対策は、健康診断結果に異常が見つかった労働者へのフォローアップや、健康診断の受診率向上のための取り組みが主な議論です。
その他にも、季節性や時事的なテーマを取り上げることも可能です。例えば、夏場には熱中症対策、冬場には寒冷地対策、近年では新型コロナウイルス感染症対策などが議論されることがあります。
※参考:厚生労働省. 「安全委員会、衛生委員会について教えてください。」.
衛生委員会は、労働者の安全と健康を守るために重要な役割を果たしています。しかし、衛生委員会がマンネリ化してしまう、効果的に機能していないという問題もあるようです。
衛生委員会がマンネリ化してしまう理由は、以下の3つが挙げられます。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
衛生委員会では、労働災害の防止や労働者の健康の保持増進に関するテーマが取り上げられます。これらのテーマは、毎年同じようなものが取り上げられる傾向があります。
例えば、毎年のように熱中症対策がテーマに挙げられ、毎年同じ議論が繰り返されているというケースです。そのため、委員会のメンバーも毎回同じ議論を繰り返すことになり、マンネリ化しやすいです。
衛生委員会で取り上げられた問題点は具体的な改善策を検討し、実行に移すことが大切になります。小さな改善から始め、それが積み重なって大きな成果となることがあります。
しかし、衛生委員会での提案を実行するには権限を持っている管理者の決済や了解が必要な事も多いです。その決済が得られず、提案が実行されないと同じ議論が繰り返されてしまうなど、マンネリ化の原因となり得ます。
実働できる権限者を巻き込み、提案された事項がしっかりと実行されるように努めましょう。
衛生委員会のメンバーは、事業者側と労働者側双方から選出されますが、毎回同じメンバーが参加する傾向があります。そのため、毎回同じ人が発言をしていたり、一部の人が聞き役になっていたりといったケースが起こりやすいとが考えられます。
その結果、効果的な話し合いができない、意見が偏っているなどの原因から参加者の意欲が低下してしまうのです。
また、同じテーマについて何度も議論することで、興味を失ったり、積極的に参加しなくなったりすることがあります。
マンネリ化を防ぐためには、以下のような対策を講じましょう。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
衛生委員会で取り上げるテーマは、労働者の健康障害の防止や健康の保持増進につながるものであることが重要です。また、職場の現状や課題を踏まえた内容であることも大切です。
季節的なテーマを毎年取り上げることは一つの手段ですが、内容に工夫を加え、新しい視点やアプローチを取り入れましょう。さらに、情報共有だけでなく次にどのような具体的な施策や対策を検討し、実行に移すかにも焦点を当てることが重要です。
例えば、熱中症対策をテーマにする場合は単に熱中症の危険性や予防対策について情報共有するだけでなく、職場における熱中症対策の現状を把握し具体的な改善策を検討・実行するなど、具体的な成果につなげることが大切です。
衛生委員会では、さまざまな立場の委員が参加します。そのため、発言しやすい環境を整えることが重要です。委員の産業保健に関する意識を向上させることで、発言意欲も高まります。
また、事前に質疑を決めておく台本方式を導入することで、発言を促進することができます。さらに、異なるメンバーが異なるテーマについてリードする役割を持つことで、参加者の多様な視点を引き出すことができるでしょう。
衛生委員会で話し合ったことを委員だけで共有するのではなく、内容や決定した改善案などを現場にフィードバックしましょう。現場に共有することで従業員の意識向上につながったり、衛生委員会のメンバーでは上がらなかった提案をもらえたりすることもあります。
安全衛生規則23条では衛生委員会での議事の概要を労働者へ周知する旨が定められており、社内イントラに議事録をアップするといった対策を取っている企業も多いのですが、意外とその存在に気付いていない労働者の方も多いようです。
四半期毎や健診時期、インフルエンザの予防接種時期といった衛生委員会と密接に関わるイベントの時にメール等で衛生委員会の活動に関しても併せて広報するといった方法も有効なのではないでしょうか。
衛生委員会のテーマを決める際には、以下のポイントを押さえることが大切です。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
衛生委員会の目的は、労働災害の防止や労働者の健康の保持増進です。そのため、テーマは、労働者の健康と安全につながるものである必要があります。
例えば、熱中症対策やメンタルヘルス対策、作業環境の改善などが挙げられます。
衛生委員会は、労使の代表が対等な立場で議論を行う場です。委員会の審議が円滑に進められるテーマであることが必要です。
例えば、具体的な目標や期限が設定されているもの、客観的なデータに基づいて検討できるものなどが挙げられます。
衛生委員会のテーマがマンネリ化すると、議論が活性化しにくくなります。テーマは、マンネリ化しないように、定期的に見直すことが必要です。
季節性や時事的なテーマを取り入れる、労働者の関心やニーズを把握すると良いでしょう。
外部からの視点を取り入れることで、新しい発想やアイデアを得られます。衛生委員会のテーマを決める際には、外部からの影響を積極的に活用することが大切です。
例えば、外部講師を招く、産業医から他社の事例を聞いて参考にするなどが挙げられます。
前項で紹介した4つのポイントを押さえてテーマを決めることで、衛生委員会がより効果的に機能するでしょう。
ここでは、3つのテーマの決め方をご紹介します。
熱中症対策やメンタルヘルス対策など、世の中で問題になっていることをテーマにする方法です。労働者の関心が高く、具体的な成果につながる可能性が高いテーマを選ぶことができます。
委員会のメンバーが困っていることや、職場で問題となっていることをテーマにする方法です。現場の声を反映したテーマを選ぶことで、委員会の活動がより実効性のあるものになります。
従業員から取り上げてほしいテーマを募集する方法です。従業員の意見を取り入れることで、より多くの人にとって関心のあるテーマを選ぶことができます。
衛生委員会は、労働者の安全と健康を守るために、労働災害の防止や衛生の保持増進に関する対策を話し合うための会議です。目的を果たすためにも、テーマを選ぶ際に注意すべきことを押さえておきましょう。
毎月、委員の中から1人ずつテーマを考える当番を決める方法です。これにより、委員全員がテーマを考える機会を得ることができ、マンネリ化を防ぐことができます。
衛生委員会で取り上げるテーマは、労働者の安全と健康に関連するものである必要があります。そのため、個人が特定される事例をテーマにすることは避けるべきです。
個人が特定される事例をテーマにした場合、その事例に関係する従業員が不利益を被る可能性があります。また、従業員のプライバシーを侵害する可能性もあります。
衛生委員会で取り上げるテーマは、具体的な内容を選ぶことが大切です。抽象的なテーマでは、具体的な対策を検討することが難しいだけでなく、従業員の理解も得られにくくなります。
例えば、労働災害の防止という曖昧なテーマではなく、高所作業における転落災害の防止というように、具体的な内容を選ぶとよいでしょう。
衛生委員会は、毎月開催することが義務付けられています。(※)そのため、同じ情報や資料を使いまわしてしまうと、マンネリ化や議論の質の低下を招く可能性があります。
毎月、新しいテーマや内容を取り上げるように心掛けましょう。
※参考:職場のあんぜんサイト(厚生労働省). 「衛生委員会」.
衛生委員会の年間スケジュールは事業場の規模や業種、労働者の状況などによって異なります。ここでは、一般的な年間スケジュールとその決め方をご紹介します。
年初や年度初めに、企業や従業員の健康・安全に関する大きなテーマを設定しましょう。例えば、労働環境の向上やストレスマネジメントの強化などです。
活動やイベントに必要な予算を確保し、年間の活動をサポートするためのリソースを計画します。
年間テーマに基づいて、各月や四半期ごとに取り組むべき具体的なテーマや課題を設定します。例えば、1月は冬季健康促進、4月はストレスチェックの実施と対策などです。
テーマや予定に合わせて、年間、あるいは四半期や半期ごとの衛生委員会開催日の日程を調整します。一般的には「毎月第3火曜日」や「毎月第4水曜日」といったような形で運営する事が多いですが、繁忙期や長期休暇のある時期は調整をする必要があるかもしれません。直前に焦らないように余裕を持って日程を調整しましょう。
年度末に、衛生委員会の活動や達成度を振り返ります。このとき、メンバーからのフィードバックを得るようにしましょう。
年度末評価を元に、次年度のスケジュールやアクティビティに反映すべき改善点を洗い出します。
年間スケジュールに、特別なイベントやキャンペーンの期間を組み込むことで、従業員への新たな情報提供や参加を促進します。例えば、世界衛生デーに関連したイベントや健康診断キャンペーンなどです。
スケジュールに柔軟性を持たせ、予期せぬ出来事にも対応できるようにします。例えば、緊急時の対応や急なテーマの追加などです。これらの手順を組み合わせることで、衛生委員会の年間スケジュールを計画し、健康と安全の向上に向けた具体的な取り組みを展開できます。
衛生委員会のテーマは、年間スケジュールに沿って選ぶことが大切です。年間スケジュールを立てることで、テーマ選びの方向性が定まり、委員会活動の効率化につながります。
具体的なスケジュールの例としては、以下のようなものが挙げられます。
1月 | 前年度の活動の振り返り 新年度の活動計画の策定 |
2月 | 安全衛生教育の実施状況の確認 新入社員の安全衛生教育の計画 |
3月 | 春季労働安全衛生週間の実施 熱中症対策の実施状況の確認 |
4月 | 労働安全衛生マネジメントシステムの運用状況の確認 5S活動の推進 |
5月 | メンタルヘルス対策の実施状況の確認 ストレスチェックの実施 |
6月 | 夏季労働安全衛生週間の実施 暑熱対策の実施状況の確認 |
7月 | 夏季休暇前の安全衛生点検 |
8月 | 夏季休暇後の安全衛生点検 |
9月 | 秋の労働安全衛生週間の実施 感染症対策の実施状況の確認 |
10月 | 定期健康診断の結果の確認 健康管理の推進 |
11月 | 冬季労働安全衛生週間の実施 寒冷対策の実施状況の確認 |
12月 | 衛生教育の実施状況の確認 来年度の活動計画の策定 |
このスケジュールはあくまでも一例であり、事業場の規模や業種、労働者の状況などに合わせて、適宜調整しましょう。
衛生委員会は、労働災害の防止や衛生の保持増進を図るために、労働者と事業者が一体となって取り組む重要な会議です。効果的で生産的な衛生委員会を運営するために、以下のことを意識するようにしましょう。
衛生委員会を効果的に実施するためには、十分な準備が必要です。具体的な準備内容は以下のとおりです。
テーマの選定は、労働災害や健康障害の発生状況や傾向、労働者の意見や要望、最新の安全衛生に関する情報を踏まえて、労働者の安全と健康に直結する内容を選ぶことが大切です。議題の整理は、テーマに沿って、議論すべき内容を明確に整理しておきましょう。
資料の準備は、議論を深めるために必要な資料を準備しておきます。出席者の確認は、委員会が円滑に進行できるように忘れずに行いましょう。
衛生委員会は委員の積極的な参加によって効果を発揮します。そのため、委員が積極的に参加したくなるような環境を整えることが大切です。
具体的には、以下の取り組みを行うことが考えられます。
選出方法を明確にすることで、自身が選出された意味や役割を理解しやすくなります。また、衛生委員会の委員に教育や研修を実施することで、知識やスキルを向上させることができるでしょう。
さらに、各委員の意見や要望を尊重することで、積極的な参加が期待できます。
衛生委員会は労働者側と事業者側が対等な立場で話し合う場になるため、双方の意見を尊重することが大切です。具体的には、以下のことに注意しましょう。
発言の機会を均等に設けることで、双方の意見が十分に反映されるようになります。相手の意見を否定せずに傾聴することで、相手の考えを理解しやすいです。
また、建設的な議論を心掛けることで、より良い対策を検討しやすくなります。
衛生委員会の議事録は労働安全衛生規則第二十三条※で作成と3年の保管が義務付けられています。衛生委員会の議論の結果を記録し、今後の活動に活かしましょう。記録には、以下の内容を盛り込みましょう。
議題を明確にすれば、記録の目的を明確にできます。議論の内容の記録は、議論の流れを把握しやすくなるでしょう。
また、決定事項を記録すると、今後の活動の指針とすることができます。以上のポイントを押さえて、効果的で生産的な衛生委員会を実施しましょう。
衛生委員会で取り扱うテーマの選定に悩んでしまう人もいるかもしれません。実際、労働災害や健康障害の発生状況や傾向を把握し、対策が必要な課題を抽出するのは決して簡単なことではありません。
このような課題を解決するために、産業医の存在は非常に有益です。産業医は、労働災害や健康障害の予防に関する豊富な知識と経験を持っています。衛生委員会のテーマ選びにおいて、産業医の意見や提案は非常に貴重です。
メディカルトラストは20年以上にわたり産業医サービスを提供してまいりました。衛生委員会を設置するのに産業医の選定方法が分からない、従業員のメンタル面もサポートしてくれる産業医が見つからないなど、さまざまな課題を経験豊富な産業医がサポートいたします。産業医についてお困りごとがありましたら、メディカルトラストまでお気軽にご相談ください。
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<株式会社メディカルトラスト編集部>
2001年から産業医、産業保健に特化して事業を展開。官公庁、上場企業など1,000事業場を超える産業医選任実績があります。また、主に全国医師面談サービスの対象となる、50名未満の小規模事業場を含めると2,000事業場以上の産業保健業務を支援。産業医は勿論、保健師、看護師、社会保険労務士、衛生管理者など有資格者多数在籍。