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労働安全衛生法では、一定規模の事業所に対し、衛生委員会を設置することを義務付けています。衛生委員会のメンバーの選定方法にも一定のルールがあるので、衛生委員会を設置する場合はメンバーの選び方を理解しておきましょう。
本記事では、衛生委員会が必要な理由や、衛生委員会の設置が必要な事業所の条件、事業所に設置する衛生委員会のメンバーの選び方、衛生委員会が調査審議する項目について解説します。
国が一定規模の事業所に対して衛生委員会の設置を義務付けているのは、労働災害を防ぐための取り組みを労使一体で行えるようにするためです。労働安全衛生法第69条および70条では、事業所は労働者の健康を保ち、これを増進するために必要な取り組みを行うことと定めています。(※)
事業者は同法の規定に基づき、労働者の体や心の健康を保つための取り組みや対策を講じる必要がありますが、事業者側が一方的に計画を立て、実行しただけでは効果的な対策とはいえません。事業者が一方的に策定した計画では、現場の声が反映されておらず、独りよがりな内容に終始してしまう可能性があるためです。
そこで国では、一定以上の労働者を雇用する事業者に対し、労働者の健康に関する取り組みや対策の内容が適切であるかどうか評価する衛生委員会の設置を義務付けています。
衛生委員会の役割は、事業所が提案した労働者の健康に関する取り組みや計画の内容を十分調査・審議することです。審議する内容について、詳しくは後述しますが、事業所の衛生に関する課題や問題から、各種ハラスメント、職場環境など幅広いテーマを取り上げ、さまざまな観点から調査・審議を実行します。
話し合いの結果、事業所が提案した取り組みや計画に問題があると判断した場合は、トップにその旨を伝え、見直しや改善を図るよう提案します。
なお、衛生委員会はあくまで中立的な立場であり、事業者側と労働者側、どちらか一方に与する存在ではありません。公平な立場から調査審議を行い、組織や労働者にとってより良い対策になっているかどうかを評価するのが衛生委員会の重要な役割となっています。
衛生委員会と混同されがちな組織に安全委員会があります。安全委員会とは、労働者の安全に関する課題や問題について話し合ったり、事業者が提案した安全に関連する取り組みや対策について調査審議を行ったりする組織です。
安全委員会の設置は労働安全衛生法第17条に定められており、衛生委員会同様、一定以上の常時雇用者を抱える事業者への設置が義務付けられています。(※)
ただ、設置の条件や審議の内容に違いがあるため、衛生委員会を設置する際は安全委員会と混同しないよう注意する必要があります。なお、両委員会の設置条件を満たす事業所の場合、安全委員会と衛生委員会を兼ね備えた安全衛生委員会を設置することも可能です。
労働安全衛生法第18条では、常時雇用者が50人以上いる事業者に対し、衛生委員会の設置を義務付けています。
衛生委員会と混同されやすい安全委員会は、業種によって委員会の設置が義務になる常時雇用者の数に違いがありますが、衛生委員会は業種にかかわらず、常時雇用者の数が50人以上なら必ず設置しなければなりません。条件を満たしているにもかかわらず、衛生委員会を設置しなかった場合、労働安全衛生法第120条1項の規定により、50万円以下の罰金に処される可能性があります。(※)
常時雇用者の数が50人に満たない事業所では、衛生委員会を設置する義務はありません。(※)ただ、衛生委員会の設置義務がない事業所でも、労働者の意見に耳を傾ける機会を設けることが、労働安全衛生規則23条の2に定められています。※
この機会は、一般的には「安全衛生懇談会」と呼ばれる事が多いです。
衛生に関連する対策や取り組みをトップの人間だけで押し進めようとすると、思ったような効果が出なかったり、労働者から反感を買ったりする原因となります。現場の意見を聞いて労働者の意見を反映させることが出来る仕組みを作りましょう。
※参考:厚生労働省. 「安全委員会、衛生委員会について教えてください。」.
※参考:e-Gov法令検索. 「労働安全衛生規則23条の2」.
衛生委員会のメンバーの構成は、労働安全衛生法第18条の2によって以下のように決められています。(※)
総括安全衛生管理者とは、労働安全衛生法第10条で定められている者のことで、主な役割は以下の4つです。(※)
総括安全衛生管理者は、常時雇用者が100人~1,000人以上(業種によって異なる)の事業所において、選任が義務付けられています。(※)
※参考:厚生労働省 東京労働局. 「共通3「総括安全衛生管理者」「安全管理者」「衛生管理者」「産業医」のあらまし」.
総括安全衛生管理者の設置義務が不要な事業所の場合は、衛生に関する事業を実施する統括者や、それに準ずる業務を担う者が衛生委員会のメンバーに選任されます。多くの場合、総務部や人事部の管理職が務めるのが一般的です。
衛生管理者とは、労働安全衛生法第12条に定められた者です。主な役割は衛生に関する業務の管理で、常時50人以上の労働者を使用している事業所では、労働者の人数に応じて1人以上の衛生管理者を選任することが義務付けられています。(※)
※参考:厚生労働省 東京労働局. 「共通3「総括安全衛生管理者」「安全管理者」「衛生管理者」「産業医」のあらまし」.
衛生管理者に選任されるには、業種に応じて所定の免許等(第一種衛生管理者免許や衛生工学衛生管理者免許など)を保有している必要があります。
産業医とは、労働安全衛生法第13条に定められた者です。主な役割は医学的な知識に基づき、労働者の健康管理について適切な提案やアドバイス、支援などを行うことです。産業医は常時使用する労働者が50人以上の事業所で1人以上選任することが義務付けられています。(※)
産業医に選任するには以下いずれかの要件を満たす必要があるため、自社に該当する人材がいない場合は外部から選任する必要があります。(※)
※参考:厚生労働省 東京労働局. 「共通3「総括安全衛生管理者」「安全管理者」「衛生管理者」「産業医」のあらまし」.
衛生に関連する何らかの経験がある人を、労働者の中から選任します。上記4つの役割を持つメンバーによって、衛生委員会は構成されます。なお、総括安全衛生管理者または事業の実施の統括者以外のメンバーについては、事業者側が指定して選任することになっている他、メンバーの人数に制限はありません。事業の規模や業務の実態などに合わせて、任意で人数を設定することが可能です。
ただし、衛生管理者、産業医、衛生に関する有経験者の半数は、労働組合の推薦に基づいて指名する必要があります。労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する人物による指名推薦によって選任されます。
衛生委員会のメンバーの任期に法的なルールはありません。ただ、公平性を期すために、多くの企業では1~2年を目途に衛生委員会のメンバーの入れ替えを行っています。
衛生委員会が調査審議する項目は労働安全衛生法によって以下のように定められています。
上記以外にも、厚生労働大臣や都道府県労働局長などからの命令、指示、勧告、指導を受けた場合は、その内容に基づいて労働者の健康リスクを防ぐための措置に関連することを調査審議する必要があります。
産業の種別にかかわらず、常時使用する労働者の人数が50人以上の事業所は、衛生委員会を設けなければなりません。衛生委員会のメンバーの選定ルールは労働安全衛生法によって定められているので、委員会設置の義務がある場合は、ルールに基づいてメンバーを選任しましょう。特に産業医に関しては一定の資格や経験を持つ者でないと選任できないため、自社に該当する人物がいない場合は外部から適任者を選ばないといけません。
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<株式会社メディカルトラスト編集部>
2001年から産業医、産業保健に特化して事業を展開。官公庁、上場企業など1,000事業場を超える産業医選任実績があります。また、主に全国医師面談サービスの対象となる、50名未満の小規模事業場を含めると2,000事業場以上の産業保健業務を支援。産業医は勿論、保健師、看護師、社会保険労務士、衛生管理者など有資格者多数在籍。