コラム
衛生委員会での議事録作成
産業医

衛生委員会「議事録」の作成法・保管等のルールを紹介

一定規模以上の事業場では衛生委員会を設置し、事業者はその運営を行います。衛生委員会を開催した後は議事録を作成し、3年間保管しなければなりません。また、議事録は全従業員に開示し、開催の都度、議事の概要を周知します。これらは法律で定められた義務であり、事業者としてはしっかり順守していきたいところです。

そこで本記事では衛生委員会の目的や機能について確認した後、議事録の作成方法、主な記入項目、議事録や議事進行のサンプルの入手先、議事録の周知と保管方法について解説します。

衛生委員会の目的・機能

衛生委員会は、労働者の安全と健康確保を目的とした機関です。すべての業種において、常時使用する労働者が50人以上の事業場ごとに設置が義務付けられています(労働安全衛生法第18条、労働安全衛生法施行令第9条)。また委員会は毎月1回以上、開催しなければなりません(労働安全衛生規則第23条)。

衛生委員会は労働者の健康障害の防止、健康の保持増進、衛生に関係する労働災害などを調査、審議するための場として機能します。例えば、安全衛生管理計画の策定、安全衛生に関する施策、過去の施策の実施結果などについて話し合います。

労働者の健康を守るという事業者の責務を果たすためには、労使一体となって防止対策などに取り組むことも重要です。衛生委員会は労働者の意見を聴く場としての役割も担っており、議長以外の委員の半数については労働者を代表する者で構成して開催します(労働安全衛生法第18条)。

衛生委員会「議事録」の作成方法

衛生委員会を開催した後は議事録を作成して、重要な議事内容について文書で記録、保存しなければなりません(労働安全衛生規則第23条第4項)。議事録の記録項目やフォーマットについては特に決まりはありませんが、単なるメモとしてではなく、以下のような要点を抑えた実用的な文書として作成するとよいでしょう。

第1に、衛生委員会を実施した証明になるように、日時や内容を正確に記録します。労働基準監督署による臨検が行われる際は、議事録の閲覧や提出を求められる場合もあるため、必ず記録しておきましょう。

第2に、労働者に報告事項や合意事項が正しく伝わるように記します。わかりやすく正確に伝えることで委員会の透明性もより確保できるでしょう。作成する際は、議長の他、委員会の構成員でもある産業医など必要な参加者の確認や承認を得ることも大切です。

第3に、健康課題を把握し、産業保健活動につなげられる有用な文書として作成します。そのために、決定事項が実施されたか次回の衛生委員会でフォローできるよう申し送り事項なども記録しておくとよいでしょう。継続調査、審議すべき内容があれば、これらも記録しておきます。

衛生委員会の「議事録」に記載する主な項目

衛生委員会の議事録に記載するとよい主な項目は次のとおりです。

  • 開催日時
  • 開催場所
  • 出席者
  • 議題(報告事項や審議事項)
  • 合意事項
  • 産業医からのコメントや産業医講話
  • まとめ、次回への申し送り事項など

それぞれの項目について、書き方やまとめ方を紹介します。

開催日時・場所

開催日時と場所を記述します。

例)日時・場所:20XX年4月30日(水)13:00~14:00 ○棟△会議室

開催日時・場所の記録は、毎月1回以上、衛生委員会を開催している証明になります。法令違反を疑われないためにも必ず記入しましょう。

なお委員会の実施状況が管理しやすくなる、参加者が予定を立てやすくなるといった点から、毎月第○週の△曜日などとスケジュールを固定している事業場もあります。

出席者

衛生委員会の出席者を記録します。議事録に記載することで委員会の開催に必要な人員を証明できます。

なお衛生委員会の構成員は次のように定められています(労働安全衛生法第18条)。

構成員人数条件など
議長1名工場長や店長などが務めるのが一般的
衛生管理者1名以上衛生管理者の有資格者 事業者が指名
産業医1名以上事業者が指名
衛生に関して経験を持つ労働者1名以上事業者が指名

議長以外の委員の半数は労働者側を代表する者でなければならないことに注意しましょう。また現状に沿った意見や要望が反映されやすいように、各主要部署から委員を選出するのが望ましいとされています。

議題(報告事項や審議事項)

衛生委員会の中で報告、審議された内容を議事録に記載します。内容を記入する際は個人情報を含めないよう配慮が必要です。

報告事項や審議事項の具体例は次のとおりです。

  • 長時間労働者への面接指導実施状況の報告
  • 産業医の職場巡視の報告
  • ストレスチェックの結果の評価方法や高ストレス者の基準についての調査審議

上記のような内容の他、以下のように特有の議題や調査審議事項についても委員会で取り上げ、その内容も議事録に記述します。

  • 新入社員の健康状況について
  • インフルエンザ、熱中症、花粉症の予防対策について
  • 前月の決定事項についての結果報告

合意事項

労使間で合意した事柄があれば記載します。合意事項を実施する担当部署や時期も明記しておきましょう。

例)合意事項:安全衛生計画書の改訂 担当者:○○課長 報告期限:20XX年10月1日

産業医からのコメントや産業医講話

衛生委員会において、産業医による講話や議事事項に対する助言があれば、その内容を記載しておきます。また議事録の記載内容は産業医にも確認してもらうとよいでしょう。

総括・次回への申し送り事項など

議長による総括やコメント、次に開催される委員会に申し送るべき事項があれば、その内容も必要に応じて記載します。

議事録のサンプルや委員会の進行について

衛生委員会の進行役

ここまで衛生委員会の議事録の主な記入項目を紹介してきましたが、議事録を作成する際には見本があると便利です。独立行政法人労働者健康安全機構が配布する「衛生委員会活性化テキスト」には議事録のサンプルがあるので、参考にしてみてはいかがでしょうか。

独立行政法人労働者健康安全機構「衛生委員会活性化テキスト」~p.13
独立行政法人労働者健康安全機構「衛生委員会活性化テキスト」p.14~

マイクロソフトのWordのテンプレートファイルは次のページからダウンロードできます。

独立行政法人労働者健康安全機構「議事録フォーマット(例)」

また委員会の進行の仕方についても、先にご紹介した「衛生委員会活性化テキスト」が役立ちます。委員長の挨拶〜定例報告〜審議、要望聴取〜閉会の流れが解説されているので、委員会の司会・進行役を担う方、委員会の実施を管理する担当部署の方などは参考になるでしょう。

衛生委員会「議事録」の周知と保管方法のルール

衛生委員会の開催後は議事録の周知と保管を行います。それぞれの方法は法律で決まっているため確認しておきましょう。

「議事録」の周知と方法

衛生委員会の議事の概要を全労働者に通知することは、労働安全衛生規則第23条において定められた事業者の義務です。合意事項の共有を実施することで企業の透明性を確保しなければなりません。開催後はすみやかに、議事の概要を記した議事録を周知しましょう。

通知方法は次のいずれかによって行うこととされているので、自社に合った方法を選びましょう。

  • 全従業員が見られる場所に掲示する、備え付ける:社内掲示板など
  • 議事録のコピーを配布する:電子メール、社内報など
  • 電子記録にして常時情報を共有する:社内イントラネット(企業内限定のネットワーク)、社内SNSなど

また企業によっては、議事概要を周知するとともに、議事事項に関するアンケートの実施や相談窓口を設置するなど、従業員からのレスポンスを受けられる仕組みを設けています。

「議事録」は3年間保管する

衛生委員会の議事録の保存期間は3年間です(労働安全衛生規則第23条第4項)。保存方法は紙と電子データのいずれかを選べます。担当者が変わっても継続管理できるようにしておきましょう。また、労働基準監督署による臨検があった際には衛生委員会の議事録の閲覧、提出を求められるケースもあるため、そうした際にすみやかに対応できる場所・状態で保管する必要があります。

衛生委員会における産業医の役割

衛生委員会の中での産業医

労働者の安全と健康確保を目的とする衛生委員会において、産業医の役割は重大です。産業医は産業保健に関する専門的な知識や経験を持つ医師として、また事業者側と労働者側の中立的な立場から、衛生委員会のまとめ役を担わなければなりません。

産業医は衛生委員会において、例えば次のような内容について確認、助言、指導を行います。

  • 年間安全衛生活動計画と実施状況
  • 衛生教育、衛生統計の内容やスケジュール
  • 健康診断の計画、実施、結果の評価
  • 従業員の健康管理、従業員への面接指導などの実施方法
  • 職場内における感染症、熱中症対策 など

産業医と連携することで衛生委員会はより活性化し、事業場において労働衛生に関する効果的な取り組みを実施できるようになるはずです。産業医にはできるかぎり毎月の衛生委員会に出席してもらいましょう。なお現在はオンラインでの衛生委員会の開催も、一定の要件を満たすことにより認められています。

まとめ

衛生委員会の開催後は議事録を作成して全従業員に周知しなければなりません。また議事録は3年間保管する必要があります。これらはいずれも事業者に課される法律上の義務であるため、労働基準監督署の指導を受けないように対処していきましょう。

衛生委員会での話し合いや議事録作成時のチェックにおいて、重要な役割を果たすのが産業医です。産業医を選任する際は、衛生委員会の運営や課題解決の相談役にもなってもらえるなど、自社の要望に合った産業医を選任するとよいでしょう。

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<株式会社メディカルトラスト編集部>
2001年から産業医、産業保健に特化して事業を展開。官公庁、上場企業など1,000事業場を超える産業医選任実績があります。また、主に全国医師面談サービスの対象となる、50名未満の小規模事業場を含めると2,000事業場以上の産業保健業務を支援。産業医は勿論、保健師、看護師、社会保険労務士、衛生管理者など有資格者多数在籍。

   
       

         
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