コラム
仮眠するOL
働き方改革・健康経営

昼寝するだけで午後の効率アップ!パワーナップ導入例

ね、眠い……。だれかがなにか言っているけど全然頭に入らない……。書類を読んだはずなのに内容をさっぱり覚えてない……。

仕事中眠気に襲われ、ぼーっとしたままどうにかやりすごした経験は、だれもが持っていると思う。

わたしは一時期、お昼ご飯を食べるとスー……っと意識が消えるような強烈な眠気に襲われ、気分転換に家事をしたり軽くストレッチをしたりするもののどうしようもなく、困っていた。

そこで「パワーナップ」という言葉を知り、実際に短時間の昼寝を試してみることに。

さて、昼寝の効果はいかに……?

NASAが認めたパワーナップ、効果は絶大

半年ほど前だろうか。

昼食後に眠くなること自体はよくあることだが、わたしの場合、昼食後はまともに思考ができなくなるほどの睡魔に襲われていた。

他人の話を聞いていたはずなのに記憶にない、気付いたら目を閉じて半ば意識を失っている、というレベルである。

さすがにどうしようかと困っていたところ、そういえばどこかの学校で昼寝が導入されたというニュースを見たことを思い出した。

調べてみると、戦略的な昼寝のことを、「パワーナップ」と呼ぶらしい。

NASAの睡眠研究により、短時間の昼寝は認知能力や注意力の向上、作業効率アップ、自由な発想が生まれやすくなるなど、多くのメリットがあることがわかった。

生体リズム、いわゆる体内時計では、夜中と14~16時が眠気のピーク。昼寝して眠気を解消することは、生理学的にも理にかなっているのだ。

30分を超えるとぐっすり眠ってしまうので、時間としては15分~20分程度が理想的らしい。

なるほど、昼下がりの眠気は生理現象だから、抗わずに寝ればいいのだ。NASAも言ってるし。よし寝よう。

幸いわたしは在宅フリーランスなので、時間の融通は利く。

完全に横になると深く眠りすぎてしまうので、デスクチェアにもたれかかって、クッションを抱きこみ、フットレストに足を乗せてひと眠り。目覚ましは15分後にセットし、二度寝はなし。

するとどうだろう。

たった15分の睡眠なのに、先ほどの眠気が嘘のように消え去り、頭が冴えて、「午後がんばるぞ」というスッキリした気分になっているじゃないか!

効果は絶大。眠気を感じずに午後を過ごせるなんて、最高だ。

たった15分寝るだけでここまで変わるのなら、もっと早くやればよかった。眠気をごまかすためにストレッチする時間があるなら、寝てしまえばよかったのだ。

約6割が眠気で業務の効率低下を感じている

わたしだけでなく、毎日忙しくしている現代人の多くは、睡眠に問題を抱えている。

睡眠に関するアンケートを見てみると、日中眠気を感じる人は37.2%。睡眠全体の質に満足できなかった人は34.7%で、睡眠時間が足りなかった人は19.9%。

「毎日快眠でたっぷり寝てる! 日中はずっと元気!」という人は、少数派だ。

仕事への眠気の影響を調べると、約6割が「業務効率の低下」を感じているが、それでも約半数が「仮眠をとることは不可能」だと答えている。

いくら昼寝にさまざまなメリットがあるとはいえ、仕事中に机に突っ伏して寝ている状態は、一般的には「失礼」「怠惰」だと言われがちだ。

「仕事中に昼寝なんて……」という心理的抵抗も大きく、実際咎められたわけではなくとも、「眠いから仕事中に昼寝しよう」という選択肢が思い浮かばない人も多いだろう。

そのうえ、仕事の合間に取る昼休憩は短くなりがちで、理想的な昼休憩の時間が63.1分に対し、現実の休憩時間の平均は44.3分。昼休憩が15分未満しか取れない人も9.8%いる。

そもそも昼休憩すら確保できない状態で、勤務中に昼寝できるかというと、なかなかむずかしいのが現実なのだ。

実際に昼寝を推奨している企業の取り組み

「昼寝は怠けている」という偏見や休憩時間を確保できない現実がある一方で、パワーナップの科学的なメリットを根拠に、昼寝する環境を整備している企業もある。

たとえば三菱地所では、就業時間内に仮眠室で30分以内の仮眠を取れるという制度を導入。仮眠室は6ブースあり、内側から鍵をかけて電気を消し、リクライニングチェアでゆっくり眠れる環境になっている。

また、GMOインターネットグループは、上限30分の予約制昼寝スペースを用意。そのうえで、昼寝スペースとは別に、12:30-13:30のあいだは会議室を昼寝のために開放している。
その時間の会議室にはリラックスチェアが並び、シエスタとして20分程度の昼寝が推奨されているそうだ。

ほかにも、東北大学病院では、インシデントリスクの抑制や生産性の向上、ウェルビーイング実現を目的とし、日本睡眠科学研究所監修のもと仮眠スペースを導入。睡眠医療センターがある大学病院でも、「昼寝」に注目していることがわかる。

わたしは「昼寝」といったら、学校のように机に突っ伏して寝るイメージを持っていたが、よく考えると仕事場でそれは非現実的だ。

となりの席の人が仕事をし、どこかの電話が鳴り響くような環境で、のんびり昼寝なんてできるはずがない。

だからこそ、企業が正式に昼寝を認めるにあたって、仮眠室のようにしっかり休める環境を作っているのだろう。

ただ「寝てもいいですよ」と言うだけでなく、「どうすればみんなの意識が変わり、実際に変化させられるか?」を考え、実行することが大切なのだ。

「昼寝」のイメージは変化している

一昔前は、「水を飲むとバテる」と、真夏の運動部でも水分補給が禁止されていることが多かった。でもいまでは、重大な健康被害をもたらす可能性があるという認識になっている。

むしろ、「水分補給をさせない学校や職場はありえない」と言われるほどである。

世の中の常識は、刻一刻と変化しているのだ。

昼寝もそれと同じで、いままでは「やる気がない」「サボっている」という認識だったとしても、今後は「健康にいい」「生産性の向上に効果的」「昼寝は権利」のような価値観に変わっていくかもしれない。

いや、変えていく必要がある、と言ってもいいんじゃないだろうか。

昼寝の効果は、すでに実証されているのだから。

昼寝推奨が健康経営やウェルビーイングにつながる

今回わたしは昼食後眠くなる対策として昼寝について書いたが、たとえば「気圧のせいで頭が痛いから少し休みたい」「生理で眠気がひどい」「子どもの夜泣きで睡眠不足」という人だっているはずだ。

昼寝を大々的に認めることによって、普段だれにも言わずに「でも仕事だからがんばらなきゃ」と無理している人たちが、「じゃあちょっと失礼して……」と昼寝で体力を回復できるかもしれない。

昼寝を許可するということは、体調に合わせて休みやすい環境をつくるということでもあり、健康経営やウェルビーイングの向上にもつながるのだ。

ちなみにわたしは昼食後の眠気があまりにもひどいので病院に行ったところ、「糖尿病の症状が多く当てはまる」と言われ、慌てて検査を受けた。

結果は糖尿病ではなくひどい鉄分不足だったわけだが、睡眠問題の裏には、別の病気が隠れている可能性もある。

「昼寝してもずっと眠そうにしている」「仮眠室から全然戻ってこず起こしても起きない」「いつも昼寝しない人が最近は毎日寝るようになった」なんて場合は、病院の受診が必要になるかもしれない。

まわりの人たちの体調の異変に気付くきっかけになるという意味でも、昼寝はぜひ多くの企業で認め、導入してほしいと思う。

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〈雨宮 紫苑〉
ドイツ在住フリーライター。Yahoo!ニュースや東洋経済オンライン、現代ビジネス、ハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。

   
       

         
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