コラム
気象病により低気圧で頭痛に悩む人
働き方改革・健康経営

気象病を知っていますか?知っておきたい症状や対策を医師が解説

気象病は、気温や気圧などの変化によって引き起こされる病気のことです。
原因はまだ完全には解明されていませんが、気圧の変化に伴う自律神経のバランスの乱れが考えられています。

今回の記事では、気象病とはどのようなものか解説して、企業としてどのような取り組みをすると良いのかについて提案していきます。

気象病とは?

まずはじめに、気象病とはどのようなものかについてみていきましょう。

(1)気象病の定義は?

気象病とは、気圧や温度、湿度、日照時間、降水量、雷、風などの気象要素から悪影響を受ける、いろいろな病気の総称です。
喘息やめまい症、頭痛、腰痛、関節リウマチなど様々な病気が、気象の変化と関連していると言われています。

また、天気が崩れる時に痛みが増強する「天気痛」は、気象病の中でも代表的なものとされています。
特に関節リウマチ、片頭痛、腰痛、線維筋痛症に伴う痛みの報告例が多くみられます。
古傷が痛むといった体調不良が毎日の天気によって左右されることを、昔の人々も体験したようです。
それゆえに、気象と病気との間に深い関係があるということは、古代から推定されてきました。

筆者は健康診断で問診などを担当しています。
春先に比べ、梅雨に入って天気が崩れたり荒れたりするようになってから、「頭痛になやまされている」「腰痛や背部痛が気になる」と訴える受診者がいつもより多くなったように思います。
もちろん、気象だけが原因というわけではないでしょう。

しかしながら、ずっと雨が降っていたかと思えば、急に真夏のような暑さになった、というような激しい天気の変化が、受診者の体調不良の原因の一つになっている可能性はあると思われます。

(2)気象病の原因は?

気象病の原因としては、以下のようなものが考えられます。

-1 自律神経の乱れ

自律神経は、意思と関係なく刺激に反応し、体の機能を調整する神経です。
例えば、暑い時に汗がでるのは自律神経の働きによるものです。
自律神経は、交感神経と副交感神経に分けられ、これらは逆の働きをしています。
これらが互いにバランスを取りながら身体の状態を調節しています。
このバランスが崩れると、だるさや不眠、疲労、頭痛や動悸、息切れ、めまい、のぼせ、立ちくらみ、下痢・便秘、冷えなどのさまざまな症状が現れます。

また、情緒不安定になったり、イライラや不安感、うつなどの症状が現れることもあります。
自律神経系の機能は、寒冷前線の通過前には副交感神経が緊張状態となり、通過後は交感神経緊張状態となるといわれています。
そのため、天気が変わる際には、自律神経のバランスが乱れ、症状が現れる可能性があるのです。

-2 内耳が敏感

気象病の原因としては、「気象要素に対する感受性の変化」も要因となります。
耳の中にある「内耳(ないじ)」には、気圧を検出するセンサーがあると考えられています。
天気痛を有する方では、この内耳へ弱い電気刺激を与えるだけでも、めまい感覚がおこるとわかっています。

つまり、天気痛を訴える方では、内耳前庭が健常者よりも天気変化に対して敏感である可能性があります。
内耳にあるセンサーが気圧の変化を感知し、前庭神経が過剰に興奮することで、先ほど述べた自律神経のバランスが乱れる、というメカニズムが考えられています。

(3)気象病について、実際にはどのように対応している?

ここで、企業が2022年に全国の男女に対して行った、気象病についてのインターネット調査をご紹介します。

その調査では、最も多い気象病の症状は頭痛でした。
そして、だるさ、気分の落ち込み、首や肩の凝りが続きました。

また、気象による体調不良を、職場や学校に伝えにくいと答えた割合は35.5%でした。

さらに、気象病への対策はどのようにしているかという問いに対し、例えば頭痛があっても約4割の方は何も治療をしないと答えました。

同調査では、周囲の気象病に対する理解不足も、ストレスの原因になるのではないかと考察されています。

(4)気象病を予防したり症状を和らげるための方法は?

気象病への対策としては、以下のようなものが考えられます。

-1 低気圧の予測をする

低気圧の接近により、気象病の症状が強く出ることがあります。
あらかじめ、低気圧が近づくことを予測しておくと、心づもりができ、休養を多く取るようにしたり、負担の大きい仕事などを調整したりすることができるでしょう。
準備をすることで、気象病への対策がとれたと感じられ、天気痛が改善されるという効果もあるようです。

-2 自律神経のバランスを整える

交感神経と副交感神経のバランスがうまく取れないと、自律神経の乱れが生じます。
休息を取ること、睡眠時間を確保すること、規則正しい生活をすることなどが、自律神経のバランスを整えることについて効果的と考えられます。

(5)気象病の治療は?

気象病に対しては、上述のように、自分の体調が悪くなる時期を予測したり、自律神経のバランスを整えることが大切です。
さらに、対症療法としては、漢方薬などを使用することで天気痛が改善したという報告もあります。

企業による気象病対策は?

では、気象病に企業が取り組むことができる対策について、具体的にご紹介します。
「自律神経のバランスを崩さないようにすること」を主軸に考えると良いかと思います。

(1)労働時間を適切に管理する

長時間労働や過重な業務負荷は、ストレスを高め、自律神経失調症のリスクを高めます。
定期的な休憩や柔軟な労働時間制度の導入など、可能な範囲で働き方改革に取り組みましょう。

(2)ストレス管理プログラムを提供する

企業は、従業員がストレスをうまく管理できるようなプログラムを提供しましょう。
例えば、ストレス管理のためのトレーニングやワークショップ、メンタルヘルスのサポートなどが含まれます。
産業保健スタッフがいるのであれば、カウンセリングや心理療法の提供も検討しましょう。
社内スタッフでそうしたケアが難しい場合には、受診勧奨など、外部の力も借りていくとよいですね。

(3)社内でのコミュニケーションと意識の向上

従業員どうし、または上司と従業員とのコミュニケーションを重視し、悩みや体調不良に関してオープンに話すことができるような雰囲気を作ることも重要です。
 従業員がストレスや負担を感じたときに相談しやすい環境を作り、上司や同僚とのコミュニケーションで問題を解決できるよう支援することも大切です。

(4)ワークライフバランスの促進

可能な範囲で、ワークライフバランスを促進しましょう。
自律神経失調症予防において、ライフワークバランスが良好に取れているかどうかは重要な要素です。
 柔軟な勤務時間制度やテレワークの導入、休暇の充実など、従業員が仕事とプライベートの両方を正しく充実させることを支援することにより、ストレスが少ない状態にすることも可能となるでしょう。

(5)労働環境の整備

自律神経の働きを整えるためには、快適な労働環境が重要です。
適切な温度や照明、快適なオフィス家具の提供、騒音やストレス整備など、働く環境を整えることでストレスを軽減することができます。
オフィスの場合は、温湿度計を置くことなどで、夏場・冬場それぞれの適切な温度と湿度に保つことが大切です。

(6)気象病に対する理解を深める

従業員とその上司双方が、気象病に対する理解を深めることも大切です。
気象病に悩む人が休暇をとったり、症状について周りに相談したりなどの対応がしやすくなる効果が期待できます。

まとめ

気象病には様々な症状が含まれます。
筆者も、天気が悪い日の前などに、特に疲労感を強く感じることがあります。

もちろん、気象の変化だけがそうした症状の原因になっているわけではありません。

しかし、気象病は医学的にも認められた概念であり、個人レベル、また企業のレベルで注意して対策に取り組む必要があります。
この記事が参考になれば幸いです。

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〈nishicherry2480〉
行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

   
       

         
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