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ストレスチェックは常時50人以上の従業員がいる事業場で、年1回以上の実施が義務となっています。検査を実施する際には、「実施者」や「実施事務従事者」を選定し、実施体制を整えなければなりません。
しかし実施者、実施事務従事者それぞれの役割などが把握できていないと、要件を満たさない人選をして法令違反になってしまったり、大きなリスクを負ってしまったりするなど、問題が発生する場合もあります。
本記事では実施者や実施事務従事者の要件、役割などを解説するので、法令を遵守したストレスチェックを効果的に実施していきましょう。
ストレスチェック制度とは、常時使用する従業員を対象に心理的負担の程度を把握するための検査・ストレスチェックを行うものです。常時使用する従業員が50人以上の事業場においては、年1回以上の定期的な実施、所轄の労働基準監督署への検査結果報告書の提出が、労働安全衛生法第66条の10第1項、労働安全衛生規則第52条の9、同第52条の21により義務付けられています。50人未満の事業場では努力義務と位置付けられていますが、従業員の健康管理を重視し、実施している企業が増えています。
厚生労働省の発行する「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」には、ストレスチェック制度は従業員の心の健康の保持増進、職場改善、働きやすい職場環境づくりの促進、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的としたものであると記されています。仕事におけるストレスが原因で精神障害や休職、退職に至るケースが増えてしまうと、長期的な労働力の確保が困難になる場合もあるでしょう。こうした課題への取り組みの一環として、ストレスチェックの実施が推奨されています。
ストレスチェックの結果は実施者から従業員に通知され、事業者側で内容を把握するためには、従業員の同意が必要です。また、結果によって高ストレス者と判定された従業員から申し出があった場合には、医師による面接指導を実施する義務が事業者側に発生します。
ストレスチェックにおける「実施者」とは事業者ではなく、「医師、保健師又は厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師若しくは精神保健福祉士」であり、「ストレスチェックを実施する者」を指します。
(参考:厚生労働省 「ストレスチェック制度導入ガイド」p.4)
実施者はストレスチェックを企画し、結果を評価します。事業者は実施責任を負い、ストレスチェック全体の方針を決定する立場です。
ストレスチェックが義務化されている事業場では産業医の選任も義務付けられていることから、事業場の産業医を実施者に立て検査を実施する場合が多いようです。次に詳述しているとおり、実施者は資格を有している外部機関の医師などに委託することもできますが、ストレスチェック後に行う従業員への面接指導については、職場巡視などを通じて事業場内の状況を把握している産業医が行うことが望ましいでしょう。
事業場の産業医が一人でストレスチェックの実施と面接指導を行うのが難しいという場合には、ストレスチェックを外部機関に委託し、実施することもできます。この場合の実施者は、委託先の外部機関の医師や保健師などが実施者になるケース、委託先の医師や保健師などと事業場の産業医や産業保健スタッフが共同実施者となるケースなどがあります。
ストレスチェックは、結果をどのようにメンタルヘルス対策や職場環境改善に役立てるかが重要です。そのため外部に委託する場合には、外部機関と事業場内の産業医や産業保健スタッフ、担当部署などが連携を図り、分析結果を把握できるようにすることが求められます。
外部に委託する際には次の点などを確認し、委託先を選定するとよいでしょう。
なおストレスチェックの結果は、ストレスチェックを行った従業員と実施者、実施事務従事者(実施者の補助を行う役割の人)以外は確認することはできません。仮に外部機関の医師がストレスチェックの実施者の場合、事業場内の産業医は実施者ではないため、ストレスチェックの個人結果を確認するには従業員同意が必要です。
ストレスチェックの実施者には主に次のような役割、職務があります。
実施者は基本的にはストレスチェックに関わるすべての実施の事務を担いますが、その一部を実施事務従事者に割り振り、実施者の指示のもと作業に従事してもらうことも可能です。
実施事務従事者は、事業者または実施者によって任命され、実施者が行う職務の一部を補助する役割を担います。
実施事務従事者には一般的に、社内の衛生管理者や産業保健スタッフ、メンタルヘルス推進担当者、人事部の一般社員や総務部の人員などが任命されます。選定できる人数に特別な制限はなく多くの場合1〜2名で担当します。
実施事務従事者には労働安全衛生法第105条に基づいて守秘義務が課せられます。そのため、実施事務従事者を任命する際には、情報漏洩やプライバシーの配慮に細心の注意を払うよう認識してもらうことが重要です。
社内でリソースを割くことが困難な場合は、外部に委託することもできます。しかし実施事務従事者には、従業員への検査や面接指導に関する通知を行うなど社内の人員のほうがスムーズに行える役割もあることから、実施事務従事者のすべてを外部に委託するのは望ましくないといえるでしょう。
ストレスチェックの結果によって、降格や異動など従業員に不利益となる決定をすることは禁じられています。また労働安全衛生規則第52条の10では、従業員の解雇や昇進、異動などに関して監督的地位にある人は実施事務に従事してはならないと定められています。そのため、人事において決定権のある立場の人(人事部長など)は実施事務従事者に任命することができません。ただし人事の部署でも人事権がない人員の場合には任命が可能です。
実施事務従事者には主に次のような役割、職務があります。
ストレスチェックの結果については、従業員ごとのストレスチェックの結果通知そのもの、もしくは結果を一覧などにしたものを記録とし、5年間保存する義務があります。
ストレスチェックで高ストレスと判断された従業員から申し出があった場合、事業者は、医師や産業医による面接指導を実施します。この面接指導は必ずしもストレスチェックの実施者が行う必要はありません。先述のように外部機関にストレスチェックを委託した場合などには、実施者と面接指導を行う医師が別であるケースも出てくるでしょう。
厚生労働省の配布する「ストレスチェック制度導入ガイド」によると、面接指導は当該事業場の産業医または事業場において産業保健活動に従事する医師が推奨されるとあります。また従業員も日頃から社内で関わりのある産業医のほうが相談しやすいといった側面もあるでしょう。面接指導は事業場の労働環境を把握する産業医・医師による実施が望まれます。
その他、面接指導を実施する上では、従業員が申し出をしやすい環境を作ることも大切です。高ストレス者と選定されても「自身の評価に影響が出るのではないか」と考えて申し出を行わず、面接指導を拒否する従業員が出てくる可能性もあります。ストレスチェックの結果が本人の同意なしに事業者へ提供されることがないこと、結果によって人事上の不利益となる決定はなされないことなどを、事前に周知しておくとよいでしょう。
ストレスチェックは事業者が全体の方針を決定し、医師や産業医、保健師などが実施者となり、必要に応じて実施者をサポートする実施事務従事者を任命して行います。義務だからと実施することだけが目的とならないよう、分析結果などを活用し、メンタルヘルスの不調防止や従業員が健康に働ける職場づくりへとつなげていきましょう。
ストレスチェックは従業員の理解を得たり、面接の申し出をするよう従業員に促したりすることが必要です。実施するに当たり、従業員の労働状況や事業場の環境を把握し、検査の効果的な運用や実施方法についての知見を持ち合わせている産業医に相談することは、事業者や社内の実施担当者にとって大きな助けとなるはずです。
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<株式会社メディカルトラスト編集部>
2001年から産業医、産業保健に特化して事業を展開。官公庁、上場企業など1,000事業場を超える産業医選任実績があります。また、主に全国医師面談サービスの対象となる、50名未満の小規模事業場を含めると2,000事業場以上の産業保健業務を支援。産業医は勿論、保健師、看護師、社会保険労務士、衛生管理者など有資格者多数在籍。