コラム
働き方改革・健康経営

従業員の健康を守る!受動喫煙を防ぐために企業が取り組むべきこと

2020年4月、健康増進法の一部が改正され、職場での受動喫煙防止の取り組みが義務化されました。この法改正により屋内での喫煙は原則禁止となり、喫煙できるのは基準を満たす喫煙室のみとなりました。

受動喫煙防止取組み義務化
厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>受動喫煙対策>「なくそう!望まない受動喫煙」Webサイト>事業者の皆さん」

しかしながら、「喫煙室でしか喫煙していないのに、事業所全体が何となくタバコくさい」「喫煙者と非喫煙者の間に溝ができてしまった」などの悩みに頭を抱えている企業も多いのではないでしょうか。そこで今回は、喫煙所を設置する際の注意点・工夫点と、喫煙の設置以外に企業が取り組むべき課題を解説します。筆者が実際に遭遇した失敗事例も併せて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

喫煙所の設置にあたり注意すべき点・工夫すべき点

厚生労働省によると国民の8割以上が非喫煙者ですが、年間15,000人が受動喫煙で発症した病気で死亡しています。そして、非喫煙者が受動喫煙に遭遇した場所のうち、28%が「職場」で占められています。

受動喫煙の現状
厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>受動喫煙対策>「なくそう!望まない受動喫煙」Webサイト>受動喫煙をなくすための取り組み」

それでは、職場での望まない受動喫煙を防ぐために企業はどのようなことに取り組めばよいのでしょうか。「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」をもとに、喫煙所の設置に関する注意点・工夫点を見ていきましょう。

喫煙所の設置に関する注意点・工夫点
厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>雇用・労働>労働基準>安全・衛生> 職場における受動喫煙防止対策について>職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」P. 5,8,13-16を参考に筆者作成

なお、業務車両内の喫煙についても非喫煙者に配慮しなければなりません。同乗者の意向を確認するのはもちろんのこと、

  • 喫煙可能車両・非喫煙車両を分けること
  • 喫煙後の後始末・清掃は喫煙者本人が必ず行うこと

といった社内ルール作りにも積極的に取り組むべきでしょう。

失敗事例から知る「喫煙所の設置以外に企業が取り組むべき課題」

従業員を受動喫煙から守るためには、喫煙所を設置するだけでは不十分です。ここからは失敗事例をもとに、喫煙所の設置以外に企業が取り組むべき課題を紹介します。

失敗事例1:従業員の理解が得られず、失敗した事例

健康増進法の改正を機に、喫煙スペースを廃止して事業所内を全面禁煙にしたところ、近隣のコンビニエンスストアや飲食店で喫煙する従業員が増加。クレームを受け従業員に注意したものの反発が強く、事業所内の雰囲気が悪くなってしまった。

こちらは、従業員に十分な説明をしないまま敷地内禁煙を強行して失敗した事例です。喫煙は健康経営の面からみると好ましいことではありませんが、喫煙する従業員も企業を支える大切な一員であることを忘れてはいけません。

従業員のなかに喫煙者がいる場合は、いきなり禁煙を強要するのではなく、まず喫煙や受動喫煙のリスクから説明して禁煙の必要性をしっかり伝えましょう。そして、喫煙をやめたいと思っている従業員がいる場合は、積極的にサポートしてください。

喫煙所を設ける場合は、あえて少し離れた場所に設置するのもよいでしょう。喫煙所が離れていれば望まない受動喫煙を減らせますし、喫煙しづらい環境を作ることで従業員の「卒煙」を促す効果も期待できます。

失敗事例2:屋外喫煙所の設置場所が不適切だった事例

社外から出入りしやすく目に付きやすい屋外箇所に、喫煙所を設置。「喫煙所」であることを明記して標識したところ、近隣住民が勘違いして夜間に勝手に利用。火の不始末が原因で、事業所が全焼する火事が起きた。

こちらは人の出入りが容易で目立つ場所に屋外喫煙所を設置したことが原因で、事業存続の危機に陥った事例です。屋外喫煙所は「通気の良い場所」「風下」に設置するのが好ましいですが、容易に出入りできる場所や人目に付きやすい場所は避けなければなりません。また、屋外に喫煙所を設置する場合、風下にある民家の住民などから受動喫煙を理由にクレームが出るなど、大きな問題になる可能性もあります。

屋外喫煙所を設置する際には、使い勝手の良さや風通しだけではなく、「従業員以外が出入りできない」「周囲に煙が流れない」という条件を満たす場所を選ぶようにしましょう。

失敗事例3:「スモハラ(スモークハラスメント)」が発生した事例

ヘビースモーカーの管理職が、業務の打ち合わせを喫煙室で実施することを強要。妊娠中の従業員が拒否したが聞き入れてもらえず、当該従業員は「スモハラ」を理由に退職した。

こちらは、喫煙によるハラスメント事例です。企業経営者が適切な喫煙所を設けても、従業員がその理由を理解していなければ受動喫煙のリスクを減らすことはできません。特に、妊娠中の受動喫煙は乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを高めるほか、低出生体重や胎児発育遅延とも関係しているといわれています。

受動喫煙者の罹患リスク
厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>健康・医療>健康>受動喫煙対策>「なくそう!望まない受動喫煙」Webサイト>受動喫煙をなくすための取り組み」

このようなハラスメントを未然に防ぐには、受動喫煙対策の内容を就業規則に明記することも必要です。例えば、

  • 喫煙室を喫煙以外の目的で使用しない
  • 非喫煙者に喫煙室への入室を強要しない

といった文言が就業規則内にあり、従業員に周知されていたら、事例3のようなハラスメントの発生は防ぎ得たかもしれません。

受動喫煙対策には従業員の理解・協力が不可欠

受動喫煙対策は、健康増進法で定められている企業の義務であると同時に、「健康経営優良法人」として認定されるための要件にもなっています。しかし、受動喫煙対策は従業員の理解・協力がなければ成し得ません。

もちろん、喫煙室を設けたり就業規則を変更したりすることも大切です。それと同時に、受動喫煙のリスク・禁煙で得られる利益・「卒煙」までのステップ・スモハラの禁止など、継続的な教育で従業員の受動喫煙防止に対する意識を高めることも企業の重要な責務といえます。

経営者側の都合で強引に禁煙・分煙を進めるのではなく、すべての従業員が心地よく働ける職場づくりを目指し、無理のない受動喫煙対策を検討しましょう。

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〈中西 真理〉
公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。

   
       

         
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