コラム
メンタルヘルス

コロナ禍のメンタル不調は「うつ」だけではない!従業員を守る備えと対策を薬剤師が解説

コロナ禍のもと、私たちの生活は大きく変化しました。そのなかで新たに問題となっているのが、感染症に対する不安から生じる「心の病」です。実際、2020年9月に厚生労働省が実施した調査では、相当数の人が日常生活で不安を抱えていることが明らかになりました。

新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査(2020年9月実施)

新型コロナウイルス感染症に関連し何らかの不安を感じた人の割合
引用)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>福祉・介護>障害者福祉>心の健康>新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査の結果概要>概要版 新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査概要・結果」

また、新型コロナウイルス感染症の流行にともなう「うつ(いわゆる“コロナうつ”“リモートうつ”など)」も大きな問題となっています。しかしながらコロナ禍においては、「うつ」とは少し異なる病気や症状-例えば、強迫性障害・適応障害・自律神経失調症など-に罹患するリスクが高まることも指摘されています。それはなぜなのでしょうか。今回は、うつ以外のメンタル面の不調とコロナ禍の関係に迫り、職場で求められる備えや対応について解説します。

コロナ禍で懸念される「うつ」以外のメンタル不調

環境の変化に対して不安を抱くこと・ストレスを感じることは、ごく当たり前の反応です。しかし、コロナ禍ではその特異な状況から、うつ以外にも以下のような病気や症状があらわれやすくなることが指摘されています。

強迫性障害

強迫性障害とは、不安から特定の行為を繰り返す疾患です。コロナ禍では、「ニュースから目が離せない」「インターネット上の情報を検索し続ける」「過剰な手洗いや消毒をする」などの行為が該当するでしょう。特定の行為に時間をかけ過ぎることから日常生活に支障があらわれたり、周囲との関係が悪化したりすることもあります。また、強迫性障害では自分の行動が不合理だという自覚があるため、周囲からどう見られるかを気にして行動範囲がせまくなってしまうこともあります。

適応障害

適応障害は、日常の出来事や環境の変化にうまく対応できず、心身に不調があらわれる疾患です。コロナ禍では、いわゆる「新しい生活様式」やリモートワークなどに適応できない場合が考えられます。症状としては、怒りやあせり、集中力の低下などのほか、攻撃的な行動(ケンカなど)、暴飲暴食などが見られることがあります。適応障害は、問題となっている環境や状況から離れると症状が緩和されることが多いのですが、コロナ禍では状況を変えることが難しいのが現実です。そのため、ほかの方法でストレスを緩和することを考えなくてはなりません。

自律神経失調症

自律神経失調症は、自律神経が正常に機能しないことであらわれるさまざまな症状の総称です。症状は、だるさや不眠、頭痛、動悸、息切れ、のぼせなどのほか、情緒不安定やうつなど多岐にわたります。自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスは、不規則な生活やストレスなどが原因で乱れることがあります。コロナ禍では、自粛生活にともなう生活パターンの変化や感染症に対する不安などが誘因になる可能性があります。

その他

新型コロナウイルス感染症に対する不安と関連する疾患や症状として、ほかに「全般性不安障害(あらゆることに過剰な不安や⼼配を抱く症状)」や「依存症(アルコールや喫煙、薬物などに対する過剰な依存)」などがあります。

コロナ禍で懸念されるメンタル面の不調

懸念される疾患・症状の例特徴コロナ禍との関係
うつ・気分の落ち込みが中心。
・ストレスから離れても症状が続く。
感染症への罹患・自宅待機や隔離・長期にわたる経済的不安・生活面への負の影響などが誘因となりうる。
強迫性障害・特定の行動を繰り返す。
・自分の行動が不合理だと自覚がある。
感染症に対する不安が過剰な情報収集や頻回の手指洗浄などを招くことがある。
適応障害・適応できない環境や状況から離れると症状が緩和されやすい。「新しい生活様式」「リモートワーク」など、今までとは異なる行動様式に適応できないことが原因として考えられる。
自律神経失調症・症状が非常に多岐にわたる。
(だるさ・不眠・疲労感・頭痛・動機・息切れ・めまい・のぼせ・立ちくらみ・下痢・便秘・冷えなど)
自粛生活に伴う生活パターンの変化や、ストレスの蓄積などが自律神経に悪影響をおよぼすおそれがある。
全般性不安障害・あらゆることに過剰な不安を抱き、日々の生活に支障が生じる。
・不安以外の症状がある。
(眠れない・落ち着きがない・集中力がない・筋肉が緊張する・イライラする・疲れやすいなど)
仕事や収入に対する不安、家族や健康に関する不安などで症状が悪化する可能性がある。
依存症・特定の物質や行動をやめたくてもやめられない状態。
・本人が依存に気付いていないケースもある。
「不安やストレスの解消のために飲酒量や喫煙量が増えた」「在宅時間が増えてゲーム時間が増えた」などが原因になる可能性がある。

コロナ禍における不安・ストレスの解消法と職場で取り組むべきこと

厚生労働省の調査によると、新型コロナウイルス感染症に対する不安やストレスを解消するために、多くの人が感染予防行動や情報収集、他者への相談、運動などに取り組んでいることがわかります。そしてこれらの行動をした人の約半数が、実際に不安やストレスが解消できたと感じています(下図)。

新型コロナウイルス感染症に対する不安やストレスを解消できた人の割合
引用)厚生労働省「政策について>分野別の政策一覧>福祉・介護>障害者福祉>心の健康>新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査の結果概要>概要版 新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査概要・結果」

では、企業では従業員の心の健康を守るために、どのような対策を講じるべきなのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

感染症対策

感染症対策はメンタルヘルスとあまり関係ないとも思われますが、感染症対策の徹底は従業員の不安を取り除くのに有効です。
マスクやハンドソープをはじめとした消耗品の準備・飛沫感染を防ぐパーティションの設置・換気の徹底・人との距離を保ちやすいレイアウトなど、企業が取り組むべきことはいろいろあります。厚生労働省作成のチェックリストや経団連のガイドラインなども利用して、職場でできる感染症対策に力を入れましょう。

■ 厚生労働省
職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト
※参考資料一覧:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00226.html

■ 一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)
オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」(2021年10月15日三訂)
製造事業場における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」(2021年10月15日三訂)

勤務時間の見直し

始業・終業時刻を変更して時差通勤を可能にすると、感染症に罹患するリスクを減らせるだけではなく従業員のストレス軽減につながります。他者との接触に不安を感じる従業員も、安心して通勤できるようになるでしょう。フレックスタイム制を導入して、始業・終業時刻の決定を従業員に任せるのもおすすめです。フレックスタイム制なら、生活の大きな変化を嫌う人は今まで通りの時刻で、他者との接触を避けたい人は始業時刻をずらすなど柔軟な対応が可能です。

なお、コロナ禍においてはコアタイムが重要な役割を果たします。コアタイムがあれば従業員同士の交流が図れますし、生活をある程度規則正しくして自律神経の乱れを予防するのにも役立ちます。

正しい情報を職場から発信する

職場から正しい情報を発信することは、従業員が不適切な情報に惑わされることを防ぐためにとても重要です。情報を作成する際には、厚生労働省や内閣府、地方自治体や医師会などが発信している最新の情報を収集し、不安をあおる表現は極力避けるようにしてください。

安心して休めるルール作り

不安定な雇用や収入の減少は、従業員の不安を増大させてメンタル面にも悪影響をおよぼします。新型コロナウイルスに関連して従業員を休ませた期間の賃金については労使間であらかじめ話し合い、従業員が安心して休める体制を整えておくようにしましょう*10

相談窓口の設置

従業員が心身の不調を感じたときに、気軽に利用できる相談窓口を設置しておくことも大切です。メンタルヘルス専門の相談員や医師との相談日を定期的に設けるのもよいでしょう。一方、従業員が自身の不調に気付かない場合もあるかもしれません。従業員の不調に気付いたら、状況に応じて医療機関への受診を促すようにしてください。

公的相談窓口の紹介も方法の一つ

経営者がどれほど手を尽くしても、相談に応じない従業員はいるものです。また、会社関係者に心身の不調を知られること・相談することを嫌う従業員もいることでしょう。

そのような従業員には、公的な相談窓口を紹介するのも方法の一つです。公的相談窓口のなかには、経済的な悩みやDV(Domestic Violence:配偶者や恋人など親密な関係にある(あった)人からふるわれるさまざまな暴力)などに対応しているものもあります。パンデミックは自然災害の一つともいえます。企業だけで問題を抱え込むのではなく、公的機関・公的支援も上手に利用して、従業員のメンタルヘルスケアに取り組みましょう。

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〈中西 真理〉
公立大学薬学部卒。薬剤師。薬学修士。医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。

   
       

         
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