コラム
疲れに悩む男性社員
働き方改革・健康経営

たかが疲れと侮るなかれ|疲労の原因や改善・回復策について産業医が解説

運動や勉強、仕事をすると疲労を感じることがあるかと思います。
疲れがたまっていても、なかなか休めないということが続き、ついつい疲れがたまっていく場合もあるでしょう。

しかし、疲労の蓄積は身体にも悪影響を及ぼしますので、適切に解消していくことが大切です。
この記事では、疲労の原因や改善策について解説します。
また、病的な疲労の原因もご紹介していきます。

疲労とは?疲労を感じやすい職種はある?

疲労は、「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である」であると日本疲労学会によって定義されています。
そして疲労は、これ以上の活動は危険であるという、身体からのサインのようなものでもあります。
運動や勉強などでも疲労感を感じることはあるかと思いますが、特に成人の方では仕事で疲れてしまう、という方も多いのではないでしょうか。

そこで、まずは疲労を感じやすい職種について解説しましょう。

(1)疲労を感じやすい職種とは

仕事で疲労を感じてしまう原因としては、長時間の労働や過密な仕事スケジュールなどがあるかと思います。
実際に、医師や看護師は長時間労働の指摘がされている職種の一つです。
外科医の勤務状況と疲労の徴候について調べた研究によると、対象となった医師の約4割において慢性疲労を感じているという結果が得られました。
医療関係の仕事は長時間労働になりやすいことや、患者の健康や命に直結する判断や手技を行わなければならないというプレッシャーに常にさらされがちという点などが、疲労蓄積の原因になるのではないかと考えます。
また、近年では患者さんに対する接遇についても厳しく評価されたり、スタッフとの人間関係にも気を配る必要があったりと、精神的にも緊張を強いられる場面が多いものです。

もちろん、他の職種であってもこうした緊張感やストレスにさらされがちな場合はあるでしょう。
そして、建築業やトラック運送業といった業種では長時間労働の指摘がされており、改善のための取り組みがなされています。

(2)疲労がたまるとどのような影響がでるのか

疲労が蓄積されたままでは、仕事のパフォーマンスにも影響がでる可能性があります。
仕事のミスが、周りの同僚や顧客に迷惑をかけることは避けたいですね。
そのため、適切に疲労をマネジメントする必要があります。
そもそも、疲労の身体への影響は、疲労がたまり、身体の機能を一定に保っているホメオスタシスが乱れることで現れます。
ホメオスタシス、つまり恒常性が保てなくなると自律神経失調症の症状がみられるようになります。

しかし、筆者にも経験がありますが、極限まで疲れがたまるとついつい食事がおろそかになったり、逆にストレスがたまって食べ過ぎになってしまったりと、通常通りの生活が送れなくなってしまうことがあるかと思います。
その結果、さらに平常状態と離れた状態となり、疲労が蓄積されるという悪循環に陥る恐れもあります。

疲労について、その対策としては組織として長時間労働をなくすための取り組みも必要かと思います。
しかし、会社などの仕組みを変えることは時間がかかります。
そこで、まずは個人レベルでできることとして、筆者も試しているいくつかの方法をご紹介していきます。

疲労を回復させるための方法について紹介

疲労を回復するためには、以下のような方法があります。

(1)ゆっくりと休む・バランスの良い食事をとる

疲労回復のためには、ゆっくりと休むことが最も大切だとされています。
理想としては1日3食バランスの良い食事をとって、寝る3時間ほど前には食事を済ませる、そして寝る1~2時間前には8分程度、38~40度のぬるま湯につかるのが質の良い睡眠につながるとされています。
また、栄養バランスの良い食事を規則正しい時間にとることも大切です。

とはいえ、日中は忙しくてなかなか食事の時間がとれず、深夜に帰宅してからたくさんのご飯を食べて、そのまま寝てしまうという生活を送ってしまう人もいるでしょう。

しかし、就寝直前に食事をとってしまうと、消化活動が睡眠を妨げてしまうので、良質な睡眠をとることが難しくなります。
その結果、疲労がとれず、また作業効率が落ち、残業になり、疲労感がたまり、という負のループに陥りかねません。

筆者は健康診断のクリニックで、たびたび受診者さんがこうした夜型生活になってしまっているという話を聞きます。
その際には、「夜はスープやサラダなど軽いものにして、朝にしっかりと食べるようにしましょう」と伝えるようにしています。
理由としては、血糖値のコントロールの面からも「朝、昼は少なく、夜はドカ食い」は不利だという面があるからなのですが、それ以外にも睡眠の質を高めることで生き生きと日中仕事などにも取り組めるようになるのではないかと考えるからです。

(2)まとまった休みが取れない場合短時間でも休憩する

とはいえ、やはり仕事が忙しく生活リズムが乱れてしまったり、まとまった時間睡眠がとれない、という場合もあるでしょう。
その際には、短時間でも休憩しましょう。
筆者の研修医時代、当直バイト明けの外科医がスタッフ共有ルームで仮眠しているのを発見したことがあり、驚いた経験があります。
その外科医はベテランの医師だったので、激務の外科医生活を続けていくために、上手く休みをとる方法を心得ていたのでしょう。

もちろん、可能であれば毎日決まった時間に寝て起きるという規則正しい生活は大切であることは強調しておきます。
しかし、業務が多くて疲れが溜まってしまうことを自覚している場合には、細かく時間をとって休むことも有効でしょう。

(3)適度に運動する

疲労回復にとっては休息は大切です。
一方で、気分転換のために、休憩時間に軽い運動を行うことも疲労を和らげ、作業効率を上げるのに効果的とも言えます。
特に、精神的な疲労を回復させるために、休息時間に運動を行うことで、疲労が改善するだけでなく、作業効率もあがったということが報告されています。
報告によると、バスケットボールのシュート運動が行われたとのことですが、ラジオ体操やストレッチなどでも効果が期待できると思われます。
筆者もついついパソコンの画面と向き合う時間が多かったり、デスクワークが多かったりすると目や肩に疲れがたまってきます。
そのため、適度なところで立ち上がり、凝り固まってしまった肩や首のストレッチを行っています。

疲労に隠れた病気は?

通常の疲れ、つまり生理的な疲労であれば休息をとれば回復していきます。
しかし、中には労働していなかったり、しっかりと休んでいるのにも関わらず疲れがたまってしまったりする状態があります。
こうした場合には、「病的な疲労・倦怠感」の場合があります。
例えば、病的な疲労や倦怠感をきたす原因として、細菌感染やウイルス感染等、また関節リウマチなどの炎症性疾患、貧血や心疾患、肺疾患による低酸素状態、低血圧、糖尿病や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患があります。
筆者も、特に女性の方で強い疲労を自覚している方の中には貧血が隠れている方が多い印象です。

一方で、こうした明らかな病気がないにも関わらず、6か月以上疲労が続く場合には慢性疲労症候群(CFS)という病態である可能性もあります。
疲労以外にも、筋力低下や筋肉痛、思考力・集中力の低下、不眠などが見られ、日常の活動量が低下するという特徴があります。
対策をとっても疲労が続く場合には、こうした病気なども疑い、一度内科などの医療機関を受診してみることをおすすめします。

まとめ

今回の記事では、筆者のおすすめする疲労回復方法についても述べました。
筆者自身は、身体的というよりも精神的な疲労を感じることがよくあるので、意識して目を閉じるようにしています。
そうすることで、目から入ってくる情報をシャットアウトし、目を休めたりリラックスすることができるように感じます。
自分にあった疲労回復方法、ひいては休息のとり方を見つけることで、疲れをためにくくできるのではないでしょうか。

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〈nishicherry2480〉
行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

   
       

         
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