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筆者は今、主に健康診断のクリニックで医師として働いています。
仕事の内容としては、健康診断を受けにきた方の診察を行ったり、人間ドックを受けにきた方に対して当日出た結果を説明したり、というものです。
ほぼ毎日のように診察や結果の説明をしていると、男女の違いを感じることも多々あります。
そこで今回の記事では、筆者が感じる男女の健康意識の違いについて具体的な事例を述べ、さらにその理由について筆者なりに考察します。
筆者は普段、健康診断クリニックで働いています。
一日に70名ほどの診察を行い、結果の説明は約30名ほど行っています。
主に女性の方の診察を行っていますが、時に男性の方の診察や人間ドックの血液検査や尿検査の結果説明も行っています。
そうした中で、筆者が感じた男女の違いについての具体例をまずはご紹介します。
あくまでも、筆者の思うところであり、事例に上がっているような方を批判をする意図は全くないということはお知りおきください。
まず男性と女性の違いとして筆者が感じることは、女性では、診察で「気になる症状がありますか?」とこちらが質問した際に、健康相談がたびたび始まるという点です。
若年の方はそもそもあまり自分の体調に不安がないのか、質問をすることはあまりありません。
若い女性の場合、訴えることがあるとすると、「めまい」など貧血や起立性低血圧を疑う症状を多く聞きます。
一方、40代後半以降の女性では、「汗が多く出る、ドキドキする、気持ちが落ち込む、関節痛などの症状があり、おそらくは更年期障害ではないか、受診した方が良いか」というような相談をされる方と多く接します。
中には子宮頸がんワクチンや帯状疱疹ワクチンを打った方が良いのかという質問内容も時々聞かれます。
普段あまり病院にいくことがない方の場合は、せっかく医師と話す機会があるので普段聞きたいと思っていることを聞こう!と思うのでしょう。
しかしながら、高血圧や更年期障害などで普段から病院に通院している方であっても、たくさんの質問をされる方もいます。
特に女性の場合には主治医には聞けないことがあると、健康診断の際に聞いてしまおうとする方もいます。
いずれにしても、普段体調について気になっている点を健康診断の場で質問されるのは、女性の方が多いと感じています。
筆者は人間ドックを受けた方についてその日に出た採血データや尿検査のデータの説明も行っています。
健康診断では、視力や聴力、血圧、血糖値や脂質、尿酸値などの血液検査項目についてそれぞれ判定が下されます。
自動的に数値に対応して判定が下されるのですが、中には、血糖値や脂質などの異常値が出ていることもあります。
そうした結果の説明をした際にも、男女での受け止め方や反応に違いを感じます。
男性はどちらかというと、結果を伝えた際に「仕方ないんだよね、夕食も遅いし、前からわかっていた」という感じでどことなく冷めた様子であることが多いようです。
一方、女性は「やはりそうでしたか、気を付けているのですが、どうすればこの値は下がるんでしょうか?」というように、改善策や対応を知りたいという方が多くみられます。
先ほど述べた健康診断の判定区分では、A:正常、B:軽度の異常、C:生活習慣改善の上、経過観察と定期的な再検査を要する、D:精密検査・二次検査が必要、E:治療中、というようになっています。
筆者たち医師は、限られた時間の中で、特にC判定やD判定について重点的に説明を行うようにしています。
しかしながら特に女性には、B判定であっても何がいけないのか、どうすれば良いのか、その項目の意味は何か、ということを詳細に質問される方が多いように見受けられます。
書面などで結果が返却される場合と比べ、医師が対面で結果説明をしているということで、聞きやすい状況にあるからかもしれません。
特に男性では筋トレや脂肪を落とすという目的で、極端に炭水化物を抜き、肉やプロテイン飲料を大量に飲むという健康法を行っている方を数人経験しました。
体重などは減るかもしれませんが、血糖値のコントロールなどの観点からは、あまり良い方法ではないようです。
実際に昨年と比べ血液検査データが悪くなっていたため、生活習慣を尋ねたところ、こうしたストイックなダイエットをしていることが判明した方がいました。
やめるように勧めたのですが、その時点で特に体調不良がないことなどもあって、なかなか受け入れがたい様子でした。
それでは、性別による反応の違いは、なぜ起こるのかについて、筆者の考えを述べていきます。
男性と女性では、健康管理の意識に差があるように思われます。
つまり、男性は何か症状が現れるまでは特に健康についてそもそも意識しないということです。
一方、女性は普段から自身の体調に気を付けていて、気になることがあるとすぐに相談しようと思うのかもしれません。
ちなみに、筆者が感じていることを裏付けるような調査もあります。
その調査結果によると、男性では普段の食生活や運動習慣には特に気を配らず、健康診断の結果や実際に何らかの症状が出たとき初めて生活習慣の見直しをしようとする方が多く見られるということです。
一方で、女性は普段から雑誌やテレビ、あるいは友人などからの健康にまつわる情報を集め、体調に気をつけている方が多いようです。
特に中高年の男性の方では、健康状態に関しての質問を行うことに対して控えめな印象です。
「ちょっと気になる症状があるが、こんなことを聞いたらどう思われるか」、また「男が弱音を吐くのは恥ずかしい」という意識もあるのかもしれません。
男女ともに40歳を過ぎた頃から現れる、いろいろな体調不良や情緒不安定になる症状をまとめて更年期障害と呼びます。
とりわけ女性の場合には、急激に女性ホルモンの分泌量が減るために、自律神経失調症のような症状が強く出る方もいます。
もちろん20代の方もいるのですが、特に高額な自費での人間ドックを受ける方はやはり40から60代の方が多いようです。
女性は更年期障害でさまざまな症状が出ることをきっかけとして、より自分自身の体調変化に敏感になったり、情報収集に熱心になったりするように思われます。
今回の筆者の思う男女差については、もちろん個人差があります。
例えば、筆者の父は典型的に病院に行きたくないタイプで、かなりひどい皮膚感染症になっても病院にはいきませんでした。
一方で、筆者の夫は少しでも体調に異変があれば、すぐに医療機関を受診するタイプです。
男女で健康意識に違いがあるとしても、医師の立場からすると、せっかく健康診断を受けたのであれば、気になることは聞いてもらえばよいかなと思います。
普段から健康状態をチェックしながら、健康診断などの医師に質問する機会を上手く活かしつつ、元気に生活していきたいものですね。
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行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。