コラム
エナジードリンク
働き方改革・健康経営

その食生活、ダイエットや疲労回復に逆効果かも?|正しい食生活について医師が提案

筆者は日ごろ、健康診断でクリニックを訪れた方々の内科的な診察や問診、そして健康診断の結果を説明するという業務をしています。
そして、時にダイエット、疲労回復に役立つと信じて、かなり極端だと思われる食生活を送っている方もいます。
そこで、今回は、筆者が健康診断で出会った「偏った食生活」の例をご紹介し、「ダイエットや疲労回復に効果的」と筆者が考える食生活についても述べていきます。

健診で出会った「偏った食生活」の例をご紹介

それでは、筆者が健康診断で出会った例を紹介していきましょう。

(1)疲労回復のためにエナジードリンクや栄養ドリンクを大量に飲む

とある男性の方でしたが、仕事が忙しく、満足に睡眠が取れず疲労がたまったところに、バランスが悪い食事をとることでさらに疲労感もたまるという悪循環に陥りました。
そこで、その方はエナジードリンクや栄養ドリンクを、朝と昼と夜、寝る前に1本ずつと、計4本飲み始めました。

エナジードリンクは、簡単に述べると「食品」で、主にカフェイン、タウリン、グルクロノラクトン、ガラナ、ビタミンなどを添加した飲み物を指します。
一方、栄養ドリンクは「医薬品」または「医薬部外品」と分類され、ビタミン等を添加し、滋養強壮、肉体疲労などに対する効能があり、効能・効果・副作用についても臨床データに基づいて国が認めているのです。

しかし、エナジードリンクも栄養ドリンクも、主な成分は糖類や数種類のビタミン、そしてカフェインです。
中にはカフェインレスや糖質オフのものもありますが、疲労回復目的でオフィスワーカーが「グイっと」飲む飲料としては、やはりカフェインが含まれているものが主流なのではないかと思います。

栄養ドリンクやエナジードリンクに含まれる糖分は活動エネルギーとして使われ、カフェインは目が覚めたような覚醒気分が得られるなどの効果があります。

一時的には疲労回復効果が得られるかもしれませんが、大量に飲むことで糖分やカフェインのとりすぎなどの問題が生じます。
すると、血糖値が異常に上昇し、糖尿病のリスクとなります。
また、ブドウ糖をエネルギーに転換するためにはビタミンB1が必要となるのですが、ブドウ糖をとりすぎるとビタミンB1が不足し、食欲不振や疲労などの症状がでてしまいます。

さて、先ほどの受診者の男性の例に戻りますが、結局栄養ドリンクやエナジードリンクを大量に飲む生活を半年間ほど続けたところ、健康診断では前年と比べて血糖値が上がり、基準値の範囲を超えてしまいました。
そして、疲労感も結局取れませんでした。
疲労感をとるために飲んだドリンクが、逆に健康を害している可能性があると説明し、受診者の方には飲んでも1日1本程度にするように勧めました。

(2)プロテイン飲料をご飯やおやつ代わりに大量に飲む

次は、肉体改造に取り組んでいた男性の方の例です。
パウダータイプのプロテインとブロッコリー、鶏むね肉を主な食事にし、その他のものはほとんど食べない、という極端な食生活を1年間続けていました。
しかし、特定の食品のみを食べ続けることで、栄養素が不足し、脱水やタンパク質のとりすぎにもなり、腎機能にも悪影響が出ていました。
確かに体重は減少したものの、健康的な痩せ方とはいえず、要精密検査となりました。
健康診断の後に精密検査を受けたクリニックでは、医師に「もう、二度とこんな無茶はしないように」と言われたそうです。

もう一人は、パック飲料として販売されているドリンクタイプのプロテイン飲料を、ダイエット目的や筋力増強目的で、毎食後に飲んでいた方です。
実は、プロテイン含有飲料といっても、成分を見ると糖質や脂質が多い場合もありますので、飲みすぎには注意が必要です。
この方は、健康診断の結果、血糖値や脂質の値が前年よりも悪化していました。

(3)ダイエットに効果があると考えハイカカオチョコレートを大量に食べる

最後の症例は、ダイエット目的にハイカカオチョコレートをたくさん食べていたため、脂質の値が高くなってしまった方です。
女性の方でしたが、体重を減らしたいがために、1日1食、朝食のみにし、その後の時間帯はハイカカオチョコレートなどで空腹をごまかしていたようです。
結果、1日の摂取カロリー自体は減ったので体重は減りました。

ハイカカオチョコレートは、カカオの含有量を高めることで砂糖や乳成分が一般的なチョコレートよりも少ないという特徴があります。

一方で、脂質やカフェインなどの含有量が多くなり、食べ過ぎには注意が必要です。
体重が減っても、血中脂質量が高くなり、高LDLコレステロール血症などになれば、動脈硬化の原因にもなります。
結果、その方には、「1日1食は中止し、3食バランスよく食べ、おやつでお腹を満たすのはやめましょう」と栄養指導をしました。

筆者の考える「ダイエットや疲労回復に効果的な食事」とは

一般的に、メディアなどの報道で「健康に良い」ということが報道されていても、実際に成分をよく見てみると糖質や脂質が多い食品は意外に多いものです。
例えば、先ほどの例に上がったものでは栄養ドリンクは、糖質やカフェインの効果などで一時的に疲労感が和らいだように思えても、結局は疲労の根本的な原因である、「睡眠不足」や「ビタミン・ミネラルなどの微量元素不足」があれば、根本的な問題は解決しません。
また、プロテイン飲料も、それを飲むだけでは痩せないし、ダイエット効果は期待できません。
ジュースを飲むよりは、タンパク質がとれるので良いかもしれませんが、プロテイン飲料を飲み、筋肉の原料となるタンパク質をとっても、実際に筋肉を鍛えなければ良質な筋肉は作れません。

そもそも、正しいダイエットとはどのようなものでしょうか。
現在の日本では、やせることがダイエットの目的、と考える方も多いかと思いますが、本来、英語の「diet」は日常的な食事・食べ物を意味します。
そこで、その本来の意味も踏まえて、筆者が考える「ダイエット(健康的にやせる)や疲労回復に効果的な食生活」のポイントを以下にご紹介します。

体重や見た目ばかりにこだわらない

ただ痩せるためにカロリーのみを気にしてしまうと、タンパク質やビタミンなどの必要な栄養素が不足します。
本当の健康は、しっかりと栄養を摂った上で成り立つものです。

食事の時間をきちんと楽しむ

満腹中枢が「おなかいっぱい」という信号を出すのには、胃に食物が入ってから少しタイムラグがあります。
そのため、ゆっくりとよく噛んで、味わってご飯を食べるようにします。
体重を減らしたい時期には、腹6分目くらいを意識し、体重を維持したい際には腹8分目とします。
もちろん、イベント時などには満腹になっても良いでしょう。

薄味にし、素材そのものの味を楽しむ

日本人は塩分をとりすぎる傾向があります。
味噌汁やラーメンの汁など、すべて飲み干していたら、塩分のとりすぎになりむくみの原因になり、高血圧になるリスクもあります。
レモン汁やスパイスなどで、塩分使用量を控えるように工夫します。

空腹の時間を作るため、漫然と間食をしない

空腹は最高のソース、という言葉もあるように、空腹であれば、割とどんな食事でもおいしく頂けます。
体重を減らす目的の他にも、食事を楽しむために、間食はとりすぎないようにします。

夕食は控えめにする

就寝時に若干空腹くらいだと、良質の睡眠をとることが期待できます。
睡眠時間をしっかりと確保(6~7時間程度)するようにすれば疲労回復にも役立つと考えられます。

海藻類や野菜は特に意識してとるようにする

これは特に、コンビニで食事を調達しがちな方にお伝えしたいことです。
かつ丼や唐揚げ弁当など、コンビニではお肉料理が目立つようになっていることが多いかと思いますが、ダイエットをするのであれば、食物繊維豊富な野菜や海藻類をしっかりととりたいところです。
しかし、サラダなどへのドレッシングのかけ過ぎには注意が必要です。

まとめ

「現実問題として、食事を楽しむようにする、というのが一番難しいかもしれません。
筆者も現在子育て中で、食事がゆっくり取れず早食いになってしまうこともあります。
そのため、一人でゆっくりと食事がとれる時には、じっくりと味わって食べるようにしています。
正しい食事は、その人の持病や年齢、性別によってそれぞれですが、「過ぎたるはなお及ばざるが如し」という原則は共通かと思います。
この記事が、食生活に悩む方の参考になれば幸いです。

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〈nishicherry2480〉
行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

   
       

         
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