コラム
働き方改革・健康経営

従業員エンゲージメントとは?あらためて知りたい基本と向上のヒント

いつの間にかよく聞くようになり、なんとなく使ってしまいがちな言葉に、「従業員エンゲージメント」があります。

近年、ビジネスの現場で頻繁に使われる言葉のひとつですが、「本質的な意味は?」と問われると、なかなか回答が難しいところです。

その理由は、従業員エンゲージメントとは、複雑な要素が絡み合った奥の深い概念だからといえます。

この記事では、あらためて確認しておきたい基本と、従業員エンゲージメントを構成する要素について、掘り下げていきたいと思います。

従業員エンゲージメントとは何かを知ることが、向上のヒントとなるはずです。

従業員エンゲージメントとは?基本の知識

まず、従業員エンゲージメント(Employee Engagement)の基本事項から見ていきましょう。

従業員エンゲージメント

従業員エンゲージメントの定義

公的な資料を紐解くと、従業員エンゲージメントの定義としてよく使われているのが、以下の経団連による定義です。

【経団連】
働き手にとって組織目標の達成と自らの成長の方向性が一致し、「働きがい」や「働きやすさ」を感じられる職場環境の中で、組織や仕事に主体的に貢献する意欲や姿勢を表す概念

日本経済団体連合会「エンゲージメントと労働生産性の向上に資するテレワークの活用」2022 年4月12日 p.1

※参考:魅力ある職場づくりに取り組む企業を支援(東京都)

一言でいえば、〈組織や仕事に主体的に貢献する意欲や姿勢〉が従業員エンゲージメントである、といえます。

そのためのカギとなるのが、組織目標と自己方針の一致や、働きがい・働きやすさのある職場環境です。

従業員エンゲージメントが高い従業員の特徴

エンゲージメントが高い従業員は、以下のような特徴を備えています。

  • 組織のビジョンやミッションに強く共感し、それを達成するために自主的に行動する
  • 自己の成長やスキルアップを重視し、自ら学び続ける姿勢を持つ
  • チームや組織全体の利益を優先し、協力的な行動をする

このような従業員が社内に多ければ、組織の生産性が向上することは、想像に難くありません。

離職率の低下や、顧客満足度の向上など、多岐にわたってポジティブな影響が観測されます。

日本の従業員エンゲージメントは139カ国中132位

企業の競争力において、重要な意味を持つ従業員エンゲージメントですが、経済産業省の資料では、〈米ギャラップ社の調査(2017年)によると、日本は熱意あふれる社員の割合が6%で、調査対象139カ国中132位という結果〉と報告されています。

日本の従業員エンゲージメントの低さに、驚く方も多いのではないでしょうか。世界平均(15%)の半分にも達していません。

なお、補足として、日本では「従業員エンゲージメント=自社への帰属意識や愛着」と解説されているケースも見受けられますが、その解釈で上図のデータを見ると、見誤ってしまいます。

調査元のギャラップ社のWebサイトによれば、従業員エンゲージメントは、以下のとおり定義されています。

ギャラップ社は、従業員エンゲージメントを「従業員が仕事や職場に関わり、熱意を持っていること」と定義しています。

従業員エンゲージメントは、職場文化の重要な要素に対する従業員の視点を測定し、管理するのに役立ちます。

従業員が積極的に仕事に取り組んでいるのか、それとも単に時間を割いているだけなのかを知ることができます。チームビルディング活動や人事の実践が、ビジネスの成果に影響を与えているか、あるいは成長の余地があるかどうかを知ることができます。

Gallup「How to Improve Employee Engagement in the Workplace」

エンゲージメントの構成要素

従業員エンゲージメントは、具体的に何によって構成されているのでしょうか。

「エンゲージメント」に関する研究や理論は複数ありますが、ここでは「ワーク・エンゲイジメント」を掘り下げたいと思います。

ワーク・エンゲイジメントの概念

「ワーク・エンゲイジメント」は、厚生労働省の「令和元年版 労働経済の分析」にて紹介されている概念です。

【Schaufeli教授らの定義】
ワーク・エンゲイジメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。ワーク・エンゲイジメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である。

島津 明人『新版 ワーク・エンゲイジメント』労働調査会 2022/3/5 p.30

キーワードは、「活力(Vigor)」「熱意(Dedication)」「没頭(Absorption)」です。

活力・熱意・没頭

先の厚生労働省資料の資料出所にも記載されている、慶應義塾大学・島津明人教授の著書では、以下のとおり解説されています。

【ワーク・エンゲイジメントの3つの要素】

  • 活力
    エネルギッシュで、傷ついてもへこたれずに立ち直るこころの回復力、仕事に対する惜しみない努力、粘り強い取り組みなどで特徴づけられます。
     
  • 熱意
    仕事への深い関与、仕事に対する意義や熱意、ひらめき、誇り、挑戦の気持ちなどで特徴づけられます。
     
  • 没頭
    仕事に集中し、幸せな気持ちで夢中になることから、時間経過の速さ、仕事から離れることの難しさなどで特徴づけられます。

ワーク・エンゲイジメントを高める工夫

これらを高めるためには、「従業員個人でできる工夫」と「組織ができる工夫」の2つがあります。

従業員個人ができる工夫では、個人の内的資源(心理的資源)を強化することで、ワーク・エンゲイジメントを高めることをねらいとします。

【従業員個人でできる工夫の例】

  • 仕事への自信を高める
  • キャリアへの道筋をつける
  • ポジティブな感情を生み出す
  • ジョブ・クラフティング  ※1
  • 思いやり行動
  • 生活習慣

※1:「ジョブ・クラフティング」とは、ジョブ・クラフティングとは、働いている方がやりがいを持って働けるように、働き方を工夫する手法です。

一方、組織ができる工夫では、従業員の外的資源(職場内の組織資源)を増やすことで、組織全体のワーク・エンゲイジメントの向上を目指します。

【組織ができる工夫の例】

  • 上司のマネジメント
  • 健康的な職場づくり

【ジョブ・クラフティングの3分類】

工夫の実践を助ける4つのガイドライン

上記の工夫の実践は、多岐にわたります。関連部署が緊密に連携しながら、協調して活動することが重要です。

具体的に実践するうえで有益なガイドラインを、以下にご紹介します。

厚生労働省の研究班「労働生産性の向上に寄与する健康増進手法の開発」では、ワーク・エンゲイジメントの向上を目的とした手法が開発され、その成果物としてガイドラインとマニュアルが公表されています。

【マニュアルの表紙画像】

上記の資料は、同研究代表者である島津教授の研究室のWebページよりダウンロード可能です。

ダウンロードはこちら

さいごに

本記事では「従業員エンゲージメント」をテーマにお届けしました。

前半でご紹介したギャラップ社のWebページの中に、

社員が仕事に打ち込み、会社でより多くの成果を上げるためには、つかの間の温かい気持ちや良い給料だけでは足りません。

人は自分の仕事に目的と意味を求めています。そして、自分らしさを知ってもらいたいと願っています。これが従業員エンゲージメントの原動力となるのです。

Gallup「How to Improve Employee Engagement in the Workplace」

……という文章が出てきます。

これこそが、多くの日本企業に欠けているものかもしれません。

表面的なコミュニケーション活性化や、形ばかりの向上施策で問題が解決するほど、単純なものではないといえます。

「従業員が、人生の多くの時間を費やして働くこと」の重みと、企業がどれだけ真剣に向き合っているのか、問われているのではないでしょうか。

—— 自分の人生の時間は、目的と意味のある有意義な仕事に費やしたい。
—— 仕事を通じて、自分らしさを表現したい。

そんな願いが叶えられると感じたとき、人は夢中になって仕事に打ち込むように思います。

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〈三島つむぎ〉
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。

   
       

         
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