コラム
デスクワーク疲れ
働き方改革・健康経営

座る時間が長くなっていませんか?座りすぎによる健康問題と対策について医師が解説

2019年から始まった新型コロナウイルス感染症の流行によって、テレワークが広まりました。
これにより感染リスクを下げることが期待された一方で、歩く量が減ってしまうという問題も生まれています。

そこで今回は、コロナ禍の運動不足、特に座りすぎることの問題点を解説し、対策方法を提案していきます。
ぜひ、バランスの良い健康管理にお役立て下さい。

コロナ禍で「座りすぎ」が増加した?

では、実際にコロナ禍で、日本人の運動についてはどのように変わったのか、みていきましょう。

(1)コロナ禍で日本人の歩数は2,000歩以上減ってしまった?

2019年末に中国から始まった新型コロナウイルス感染症(以下新型コロナ)の流行は、世界中に広がりました。
日本では2020年から、新型コロナの流行が始まったことで、外出制限などの行動規制が実施されます。
その結果、日常生活だけでなく、幅広い業種での働き方にも大きな影響が及びました。

そして、働き方の選択肢の一つとして、テレワーク(インターネットなどを利用して、本来の勤務場所から離れ、自宅などで仕事を行うスタイル)が急速に普及しました。
テレワークにより、通勤経路や職場での対人接触を大幅に減らせることから、感染症の抑制が可能になるという報告もあります。
皆さんの勤める会社の中でも、新型コロナの流行によりテレワークが導入されたというところも多いのではないでしょうか。

一方で、新型コロナの感染が拡大し、テレワークに加えて、緊急事態宣言などで外出の自粛が余儀なくされたことなどもあり、運動不足が懸念されるようにもなりました。

実際に、新型コロナが流行する前後での、世界的な歩数を調査した研究があります。
2020年2月から6月の187カ国、455,404名の歩数アプリのデータを調査した研究ですが、この結果、日本人の歩数は2000歩も減ってしまったということだったのです。

2,000歩とは、具体的には体感としてはどれくらいの歩数でしょうか。
厚生労働省によると、「1,000歩は約10分の歩行で得られる歩数であり、距離としては600〜700m」とされています。
そのため、おおよそ2,000歩は、1.2〜1.4kmの距離となります。
一日約20分くらいの歩行運動が減ってしまったと考えればよいのです。

(2)コロナ禍に入る前から日本人は「座り過ぎ」?

実は、新型コロナが流行する前から、日本人は国際的には座る時間が多い国民でした。
20か国の人について、2002年から 2004年にかけて平日の座っている時間についてアンケート質問を行った研究があります。
この研究によると、台湾、ノルウェー、香港、サウジアラビア、および日本の成人は、最も座っている時間が長く、その中央値は360分以上であったと報告されています。
1日24時間のうち、起きている時間は約18時間程度と思われますが、そのうち6時間以上も座っているということになります。

(3)座りすぎによる健康障害は?

座っていたり、横になっている状態のことを、「座位行動」といいます。
学術的には、「座位、半臥位(はんがい:少し体を傾けて寝ている姿勢のこと)、もしくは臥位(がい:仰向けやうつ伏せで寝ている姿勢のこと)の状態で行われる、エネルギー消費量が1.5メッツ以下のすべての覚醒行動」とされます。

メッツというのは身体活動の強度を表す単位で、安静時(横になったり、座って楽にしている状態)を「1」とした時と比較して、何倍のエネルギーを消費するのかが分かる指標です。
以下の図で読み取れるように、料理や洗濯といった一般的な家事と比べて、半分くらいの運動量ということになります。

では、座っていたり、じっとしていたりする時間が長すぎると、どのような健康障害が生じるのでしょうか。
いくつか研究をご紹介します。

普段、運動しているかどうかに関わらず、テレビの視聴時間が多い、つまり座りすぎていると2型糖尿病が多くなってしまうという研究があります。

また、座位時間が長いと死亡する危険度が高いことが示された研究もあります。

さらに、1 日に11時間以上座っている人は、4時間未満の人と比べ死亡リスクが40%も高まるともいわれています。
このように、「座りすぎ」には健康被害をもたらしてしまう危険性があるのです。

そこで、これから「座りすぎ」を防ぐための工夫を紹介していきます。
WHOは、成人は週に150 分以上の中強度(ウォーキングやゴルフなど、軽く息が弾む程度のもの)の身体活動を行うことを推奨しています。

また、30分に1回立ち上がり動くと、座り過ぎによる健康リスクを軽減すると言われています。
これらの点を踏まえて、対策をとっていきましょう。

「座りすぎ」を防ぐための工夫を紹介

テレワークが進み、自宅でも「座りすぎ」を予防することが大切になります。
また、テレワークが進んだとはいえ、日本人の多くが事業所で働く従業員であるということをふまえると、個人のみならず企業側も座りすぎには対策をとるべきだと考えられます。

2018年6月には「スポーツを通じた健康増進のための厚生労働省とスポーツ庁の連携会議」が開催されています。
その会議の資料の中で、「『事業場における労働者の健康保持増進のための指針』の改訂に向け、職場で実践可能な健康保持増進対策も検討する予定」とあり、その具体例として「座りすぎ防止」が取り上げられています。

ここでも、労働時の座りすぎを重要な課題と捉えており、事業場、つまり職場でも対策が必要だと政府も考えている様子がうかがえます。
そこで、職場と自宅での工夫についてのアドバイスをしていこうと思います。

(1)職場でできる工夫は?

テレワークが導入される前から、日本人は座っている時間が長かったということを先に説明しました。
そこで、職場でできる工夫としては、従業員に対して座りっぱなしの姿勢をとらせず、立つように促すことも効果的と考えられます。

例えば、昇降式デスクを導入する、という工夫があげられます。
昇降式デスクの導入や、動く歩数を多くするような間取りのオフィスにした結果、従業員の健康状態が改善したという研究もあります。

また、テレワークか、オフィスワークかに関わらず、30分に1回立ち上がり、軽い運動をするよう職場として従業員に周知し、取り組むという方法もあるでしょう。

(2)自宅でもできる工夫は?

では、自宅ではどのような工夫があるでしょうか。
テレワーク中でも、感染対策をとった上で、動くことを意識したり、ストレッチや軽い体操、ウォーキングやジョギングなどをしてみましょう。

そして、可能であれば、先ほどご紹介した昇降式の机を用意することも、立つ姿勢をとることができるのでおすすめです。

まとめ

今回は、座りすぎによる健康障害がどのようなものかということや、その対策について解説しました。
新型コロナの感染状況には今後も注意して行く必要がありますが、同様に、従業員の健康を守る方法として、座りすぎを防ぐことは大切だと思われます。
従業員に対しては、感染対策をとった上で、体を動かすことも促していきましょう。

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〈nishicherry2480〉
行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

   
       

         
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