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働く女性が増加した近年では、更年期障害に悩む世代である40〜50歳代の女性も貴重な労働力といえます。しかし、最悪の場合、更年期障害を理由とした離職につながるケースもあります。
更年期離職の女性は46万人規模になるという推計となる研究もあります。更年期障害は女性特有のものではなく、男性にも見られます。
そこで今回は女性、男性それぞれの更年期障害の特徴とともに、仕事に与える影響、職場に求められる対応などについて解説していきます。
まずは更年期障害とは何かを説明します。
更年期障害とは、男女ともに40歳を過ぎた頃から見られる、様々な体調の不良や情緒不安定などの症状のことです。
日本人の平均閉経年齢は約50歳ですが、個人差が大きく、早い人では40代前半、遅い人では50代後半に閉経を迎えます。閉経前の5年間と閉経後の5年間を併せた10年間を「更年期」といいます。更年期に現れるさまざまな症状の中で他の病気に伴わないものを「更年期症状」といい、その中でも症状が重く日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」と言います。
治療には、ホルモン剤などの薬物治療や漢方療法などがあります。
令和3年の労働力人口総数に占める女性の割合は、44.6%という結果となっています。
そして、令和3年の女性の年齢階級別労働力率の調査結果では、40代から50代前半の女性の約8割、また50代後半の女性も約7割が、何らかの仕事をしているという結果となりました。いずれの年代も、平成23年と比較すると増加しています。
40〜50歳代の女性の就業率は高い一方で、この世代は更年期障害に悩む世代でもあります。同時に、この世代はベテランとして、職場にとっても貴重な戦力となっている場合も多いと考えられます。更年期障害について適切な対応を行うことは、職場や企業にとっても大切なことになります。
次に、職場が女性の健康課題に取り組むべき理由を、もう少し詳しく解説します。
さて、先述のように、女性は現在では労働人口の半数を占めます。
経済産業省の「健康経営における女性の健康の取り組みについて」という調査では、健康経営を通じて女性の健康課題に対応し、女性が働きやすい社会環境の整備を進めることが、生産性向上や企業業績向上に結びつくとされています。
さらに、日本医療政策機構の「働く女性の健康増進調査 2018」によると、ヘルスリテラシーの高い女性の方が仕事のパフォーマンスが高いということもわかっています。
補足ですが、上の図の縦軸である絶対的プレゼンティーズムが高いほど、仕事のパフォーマンスが高い、つまりプレゼンティーズムの傾向が低いとあります。このプレゼンティーズムとは、「健康の問題を抱えつつも仕事(業務)を行っている状態」を表す言葉になります。
しかしながら、先に述べた経済産業省の調査では、女性の健康課題が労働損失や生産性等へ影響していることについて、70%以上の回答者が知らなかった・わからないと回答しています。男性や管理職だけでなく女性自身の知識不足も課題ということがわかりました。
これらのことから、職場や企業には、更年期障害も含めた女性の健康課題について、従業員のヘルスリテラシーを高めることが求められているといえるでしょう。
さて、更年期障害に戻って、症状について述べていきます。更年期障害では、自律神経失調症と同様の症状が現れます。
女性の閉経前における身体的症状としては、のぼせや顔の火照り、脈が速くなる、動悸や息切れ、異常な発汗、血圧が上下する、耳鳴り、頭痛やめまいなどがあります。また、精神的な症状としては、興奮亢進、イライラや不安感、うつ、不眠などがみられます。
2022年の連合東京の調査によると、更年期にさしかかる40〜50代女性の回答者のうち、約4分の3が更年期障害と思われる何らかの症状を抱えていることが明らかになりました。「疲れやすい」「肩こり・頭痛」「イライラ」などが上位に上がりましたが、その他、具体的な症状には、以下のようなものがありました。
更年期障害は女性に起こるイメージが強いかもしれません。女性の場合は、更年期障害の原因は、閉経期の急激なホルモンバランスの乱れによるものです。
それに対して、男性の場合は、男性ホルモンが中年以降、加齢とともに穏やかに減少します。そうしたホルモンの減少のスピードに伴い、男女の更年期障害の症状には下のような差が生まれます。
男性の場合は性欲の低下なども症状として現れることがありますが、女性と同様に体の症状や心の症状も伴ってきます。このように、原因や時期に違いはあるものの、男女問わず、更年期障害は中堅からベテランの間の年代に起こります。
では、ここからは更年期障害が仕事を続ける上でどのような問題を生じるのかをみていきましょう。
先述の連合東京の2022年の調査では、更年期障害の症状が辛いときでも、半数以上の人が「何もしない」と答えていることも明らかになりました。また、何らかの対応をとっている人では、通院や内服、休暇の取得をした人が多いという結果でした。
それでは、更年期離職について、NHKが2011年に実施した、更年期症状を経験した40〜59歳の男女の調査結果をご紹介します。更年期症状が原因で仕事をやめた人は、女性全体で9.4%、男性全体で7.4%でした。
「仕事を続ける自信がなくなったから」
「働ける体調ではなかったから」
「職場に迷惑がかかると思ったから」
「職場に居づらくなったから」などの理由が多いという結果です。
更年期症状が原因で離職した40代、50代の女性は、45.9万人に上り、1年間の経済損失は1,848億円~4,196億円にも及んでいるという推計もあります。*
先のNHKによる調査の結果から、更年期症状に悩む男女が職場や国に望む事項も明らかになっています。職場からの支援としては、「症状や対処法について理解できる研修」を最も多くの人が希望していました。
国に対しては、男女ともに更年期症状で休んだときの収入保証を希望する人が多いこと、女性では休暇を使いやすい職場環境の整備も希望する人が多くみられました。
更年期障害による離職を防ぐために、職場ができることは何があるでしょうか。3つアドバイスをしていきますね。
更年期障害の症状が重いときには、治療のための休暇がとれるようにすると良いでしょう。
そして、テレワークやフレックス制度の導入を行い、更年期症状があっても、自分の体調に合わせて勤務を継続することができるよう、環境を整えることも望まれます。こうした労働環境の整備を実践することで、女性従業員だけでなく、男性従業員も、健康状態に合った柔軟な働き方が期待できます。
先述の通り、更年期障害を含めた女性の健康についての知識が足りないことは、職場が取り組むべき課題の一つです。
そこで、更年期障害などの、女性の健康課題に対する知識を深めるような研修を行ってみましょう。女性の健康について取り上げることで、女性従業員自身は自分たちの健康に対する対処方法を知ることができます。それだけでなく、男性従業員や管理職も、同僚や部下への接し方を知ることができるでしょう。
女性従業員がちょっとした不調を相談したり、管理職が部下の健康状態を見ながら対処方法を相談したりすることができるよう、相談窓口を設置することも良いでしょう。更年期障害について、身近な人には話しにくいこともあるかもしれません。そのような場合には、第三者に相談ができることは、心強いと考えられます。
今回の記事では、更年期障害の特徴と、更年期障害による離職を防ぐためのアドバイスについて述べました。女性だけでなく、男性であっても、更年期障害について知ることは快適に会社生活を送るために役立つと考えられます。職場の環境整備やヘルスリテラシーの向上により、更年期障害があっても働き続けることができるようにしていきましょう。
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行政機関である保健センターで、感染症対策等主査として勤務した経験があり新型コロナウイルス感染症にも対応した。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。